神戸市の有馬温泉にある「かんぽの宿 有馬」に宿泊した70代男性がレジオネラ属菌に感染し、そのうちの1人がレジオネラ肺炎で死亡したと報じられている。
報道によると、2人は3月18日~20日に同施設の公衆浴場を利用したいたという。その後、神戸市が立ち入り調査を実施し遺伝子検査を行ったところ、浴槽にあった菌と2人から検出された菌の遺伝子パターンが一致したという。
ちなみに基準値を超えるレジオネラ属菌が検出されたのは、有馬温泉名物の金泉ではなく、水道水の浴槽からだったという。同施設は4月1日から営業を自粛していたが、14日に神戸市から営業停止命令が出されている。
家庭でも感染する可能性があるレジオネラ症
ここ近年は、マスク着用機会の増加や温泉等の入浴施設利用が減ったことで、減少傾向にあるものの、それでも毎年2,000人以上の感染者が報告されているというレジオネラ症。発症した場合の死亡率がかなり高いのも大きな特徴だ。
温泉などの入浴施設においては、湯を循環させてろ過・加温してリサイクル使用する循環式を採用している風呂において、その清掃や消毒などのメンテナンスを怠ると発生してしまうことは、多くの方が知るところ。
ただ各家庭においても、追い炊き機能付き風呂や24時間風呂といった循環式浴槽、あるいは水を加熱しない超音波式の加湿器などから発生することもあるなど、身近なところから感染してしまうケースも結構あるようだ。
今回の件に関しても、施設側の衛生管理体制がきちんと整っていたのかどうかが、当然のように問われることになりそうだが、そのいっぽうで同施設はこの4月をもってすでに日本郵政の手を離れているとのこと。現在、同施設はホテルマイステイズなどを展開するマイステイズ・ホテル・マネジメントが、他の「かんぽの宿」とともに運営しているという。
民営化以降も約650億円もの損失を計上
「かんぽの宿」といえば、もともとは民営化以前の郵便局が扱っていた簡易保険の加入者のみを対象とした保養施設だったが、民営化以降は保険の加入を問わず広く利用できるように。
いっぽうで「かんぽの宿」は、そういった設立経緯もあってか、民営化以前から恒常的な赤字体質だったと指摘されており、郵政民営化の段階では年間およそ40億円もの赤字を毎年垂れ流していたという。そのため民営化からわずか2年後の2009年には、さっそく全国に存在していた施設を一括で売却するという話が浮上した。
ところが、その売却先が政府との繋がりが強い宮内義彦氏が率いるオリックスグループの企業だったということで、約109億円という売却予定額の正当性に疑念の声があがる事態になり、その後一括売却は断念されることに。
それ以降は日本郵政によって営業が継続され、複数の不採算施設を閉鎖するなどで経営の健全化を図ったものの、状況は好転せず。それどころかここ数年は、コロナ禍による外出控えの影響をまともに受ける格好となり、2020年度はなんと約113億円という大赤字に。結局、民営化以降に生じた累積損失は、約650億円にものぼったという。
このように日本郵政にとっては、まさにお荷物もいいところだった「かんぽの宿」だったが、2021年にようやく売却の話がまとまり、先述のマイステイズ・ホテル・マネジメントを含めた4社に、全国32施設を合計約88億円で譲渡することに。1955年から続けてきた宿泊事業から、ようやく撤退することとなった。
そしてこの4月からは、新たな運営会社のもとで再スタートを切っていた「かんぽの宿」だったが、今回の件でその出鼻をいきなり挫かれる格好に。日本郵政としても、さすがに譲渡直前に起こった事態であるということで、使用薬剤の見直しや設備の点検などといった再発防止への取り組みにも、今後関わっていくと説明しているが、今の運営会社にとっては「最後の最後にとんだ置き土産を……」といったところだろうか。
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