若年層には投資に回す余剰資金ナシ
さらに所得が増えない中年・ミレニアル世代・Z世代などは、そもそも投資原資が枯渇しており、生活資金を確保するだけでも青息吐息が現状です。
「銀行預金をやめて金融投資に」という話は絵に描いた餅より現実性の低い話になってしまいます。
所得倍増計画というと、1960年に当時の池田内閣で策定された長期経済計画が思い出されます。この計画では、翌1961年からの10年間に実質国民総生産を26兆円にまで倍増させることを目標に掲げた「国の成長」と「国民の所得の増加」という至極まっとうなプランでした。
それに比べて、今回の「預金を金融投資にまわしたら資産所得が増えるかも知れない」などという政策は、NISAの枠を拡大しても多少の税制的な優遇策が提示されても、ほとんどは国民自前の話です。
これが本当に政策なのか。まして、それのどこが新しい資本主義なのか。欺瞞的プロモーションに開いた口が塞がらない状況です。
投資は増えても円安でキャピタルフライトが激増する可能性も
日本株は、バブル崩壊前につけた1989年の3万8,957円44銭から33年近く経過しても、日銀が気がふれたようにETF買いをしても、3万円を若干上回った程度でいまだに高値を更新できないまま沈滞した状況に陥っています。
これをリアルな人生で見せつけられてきている中高年の世代が、多少の税制インセンティブをちらつかされただけで、一気に投資マインド爆発!……とはならないであろうことは、政策実施に至らない前にわかることです。
また新型コロナ自粛期に米国のロビンフッダーよろしく新規に株式投資に参入したミレニアル以下の世代は、最初からパフォーマンスの悪い日本株を無視して、多くが米株投資に興じている現実があります。
いわゆる「キャピタルフライト」というやつで、個人投資でも日本から出て外貨ベースで海外市場で投資を行うことが激増する可能性があり、岸田政権がこれを止めにかかれる手立てはほとんどない状況に陥りそうです。
そもそも国内株ほど本邦個人投資家に買いにくいものはない
米国では確かに、この新型コロナ感染拡大で外に出られない時に米国民は提供された多額の給付金を原資にして、かなり米株投資に興じることとなり、応分の利益を獲得することになったのはご案内のとおり。
しかし、そもそも米株の場合はどの銘柄でも1株から購入できて、相当に投資の敷居が低いことが東証株と比べた大きな違いになっています。
この間、400万口座以上の個人投資家の新規開設を獲得した楽天証券では、楠社長が声を大にして本邦でも1株から取引できるようにすべきと発言していますが、東証も当の上場企業も「手間が煩雑」としてそれに応じる気配はありません。
しかし米国で当たり前にできていることが、なぜ東証ではできないのでしょうか。
意味不明の新しい枠組みなどを始めても、投資ボリュームの啓発にはなんら寄与していないことを考えれば、政権も関わってこのあたりの仕組みを変える必要があると思われます。
また英国などでは、株といえばCFDによるレバレッジをかけた株の特定銘柄取引や指数取引が盛んで、現物株取引よりポピュラーになっています。
欧州圏では、投資した資金以上の損失が出ても追証を求めないゼロカットシステムを実装することが金融監督機関から必須要件として求めれており、こちらも個人投資家保護に大きく寄与しています。
本邦では大手証券会社が90年代に顧客の損失補填をして大問題になって以降、こうした顧客サービスはまったく認められていません。これも投資家保護の仕組みとしては欠かせないといえ、国内でも導入が求められるところです。
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