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「在庫は4カ月」世界食糧危機へのカウントダウンが始まる。無効力のロシア経済制裁が世界に引き起こす大災禍=吉田繁治

欧米によるロシアへの経済制裁は効果をまったく上げず、ロシア・ルーブルは上昇し、貿易黒字も上昇の一途をたどっています。一枚岩に見えるエネルギーの禁輸措置も長くは続きません。戦争がこのまま続く可能性は高く、そうなると世界の食料在庫は切れ、今夏には本格的な食料危機に陥ります。『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年6月3日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

金融制裁で高めた中国の価値

通貨と金融(=貸し付けと債券買い)の戦争です。米国は、敵国の通貨を国際的に流通させないため、SWIFT回線から締め出しを行います。

SWIFTには世界の銀行(中央銀行を含む1万1,000の銀行・証券)が加盟し、ドルを媒介通貨にして、世界の通貨交換と送受金を行っています。

SWIFTは、BIS(中央銀行の上部機関である国際決済銀行:バーゼルの、バベルの塔を小型にしたビル)の回線です。BISへの加盟は、世界の、国際的な銀行取引を行う条件です。

長期的には(5年か?)、米ドルからの離脱を目指している中国は、SWIFTとは別に、CIPSの送受金回線を作って、世界の主要400行が加盟しています。

日本では、CIPSに外為銀行の、三菱UFJやみずほ銀行が加盟しています。CIPSの基軸通貨は人民元です。円の輸入代金を、CIPSで中国企業に送金すると「円→人民元」に交換され、現地の企業の口座に振り込まれます。CIPSは、西欧のユーロのような地域通貨をユーラシア大陸に広げる目的をもっています(金融の一帯一路)。

米国は、戦争や経済封鎖のとき(イラン、北朝鮮、ロシア)に対しては、金融制裁として、SWIFTからの排除を行います。ただし中国に対しては、金融制裁は発動できないのです。

中国は世界1の外貨準備(3.1兆ドル:400兆円)が大きな国です。毎年のドル買いが世界1大きく、ドル基軸(いわば神輿)を支える担い手です。中国がドル基軸を辞めたときは、ブレトンウッズ3となりなります。

1944年が金兌換のドルでブレトンウッズ1、1971年が金・ドル交換停止でブレトンウッズ2、2022年から2024年が、3ポールの基軸通貨のブレトンウッズ3なるでしょう(ドル、ユーロ、人民元)。

購買力平価でのGDP(=商品生産数量)では、米国を越えている中国を、SWIFTから排除してCIPSに追いやると、ドル買いが急減し、米国の最大の国益である「ドル基軸の体制」が瓦解します。貿易赤字国の米ドルは、少なくとも1/2に暴落するでしょう。

ドル基軸を支える米国の軍事覇権

米国の軍事覇権は、ドル基軸の世界体制を支えるためのものです。ドル基軸は、世界の銀行の、任意の協定であり、強制力をもつ条約や法ではない。このため世界の銀行に「(任意に)ドルを買わせ続ける裏付け」が必要です。

これが「いざとなれば、海外の国を短時間でつぶす」という軍事覇権です(実際は脅威を煽る張り子の虎です)。米軍が駐留する目的も、ドル覇権の瓶の蓋にするためものです。

人民元は、開放経済の1994年以来、「ドルペッグ」の通貨体制の中にあります。人民元は、中国が貿易黒字で貯めてきた外貨準備(3.1兆ドル)を信用の裏付けの担保に発行されています(人民銀行のB/Sを見れば明らかです)。

中国の外貨準備も、米国FRBに預託されています。ロシアの外貨準備(6,000億ドル)も、ユーロはECBと欧州の銀行に、ドルは米国のFRBと米銀に預託されているので、凍結されました。制裁解除までは、ロシアのマネーをロシアが引き出しできないのです。

Next: ロシアのオリガルヒへの制裁で暴落したビットコイン

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