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10年足踏み「パナソニック」株は今が買い?シャープや東芝と同じ轍を踏む?家電メーカーの勝ち組・負け組の差=栫井駿介

大手家電メーカーである、パナソニックホールディングス(以下・パナソニック)<6752>の経営状況に深刻な懸念が生じています。過去10年間の業績推移を見ると、売上高は7兆円から8兆円台の間で停滞しており、成長が見られません。特に2020年度には新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込み、6兆円台まで減少しました。その後、回復の兆しは見られるものの、以前の水準には戻っていません。

このような業績の停滞は、ライバル企業との対比で一層際立ちます。ソニー<6758>や日立<6501>は、リーマンショック後の業績低迷を経て大きく成長を遂げ、事業構造の転換に成功しました。しかし、パナソニックはなぜこのような体たらくな状況に陥っているのでしょうか。

家電王国と呼ばれた日本企業の栄枯盛衰の中で、パナソニックの現状と課題、そして今後の展望について考えます。このような状況下で、パナソニック株は投資対象として魅力的なのでしょうか。長期的な成長戦略や事業構造の改革が見えない中、投資家はどのように判断すべきでしょうか。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

総合家電メーカーの明暗

パナソニック<6752>通期業績推移(SBI証券提供)

パナソニック<6752>通期業績推移(SBI証券提供)

日本の総合家電メーカーの歴史は、栄光と試練の物語と言えるでしょう。ソニー、パナソニック、東芝、日立などの企業は、高品質な家電製品を世界中に供給することで「メイドインジャパン」のブランドを確立し、グローバル市場で圧倒的な存在感を示しました。これらの企業は日本の経済成長を牽引し、世界有数の技術力と革新性を誇る企業として認知されるまでに至りました。

しかし、21世紀に入ると、この黄金時代に陰りが見え始めます。中国、韓国、台湾などの新興国メーカーが急速に台頭し、コスト競争力と技術力の向上により、日本企業の優位性が徐々に侵食されていきました。2000年代初頭から、この傾向は顕著になり始め、日本の家電メーカーは厳しい国際競争にさらされることとなりました。

そして2008年、世界を襲ったリーマンショックは、この苦境に追い打ちをかけることとなります。急激な需要の縮小と為替変動により、多くの日本の総合家電メーカーは巨額の赤字を計上し、経営の根幹を揺るがす危機に直面しました。この出来事は、日本の家電産業の構造的な脆弱性を浮き彫りにし、各企業に抜本的な改革を迫ることとなったのです。

リーマンショック後の激動の時代を経て、日本の総合家電メーカー各社の明暗が分かれることとなりました。その中で、戦略的な転換に成功した企業が際立つ成長を遂げています。

「勝ち組」の日立、ソニー

日立製作所は、その代表格と言えるでしょう。同社は家電事業から撤退し、社会インフラやITソリューションなどのBtoB事業に経営資源を集中させる大胆な戦略転換を実行しました。2022年には米国のデジタル技術企業GlobalLogicを約1兆円で買収し、デジタルトランスフォーメーション(DX)分野での競争力を大幅に強化しています。この結果、日立の株価は過去10年で約5倍に上昇し、時価総額は14兆円を超える規模にまで成長しました。

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一方、ソニーグループは、かつての主力だったテレビやオーディオ機器などの家電事業の比重を下げ、ゲーム、映画、音楽といったエンターテインメント事業を中心とする企業へと劇的な変貌を遂げました。特にPlayStationブランドを軸としたゲーム事業は、ハードウェアとコンテンツの両面で圧倒的な競争力を持ち、安定した高収益をもたらしています。加えて、イメージセンサー事業でも世界トップシェアを維持し、多角的な事業ポートフォリオを構築しています。この結果、ソニーの時価総額は約15兆円に達し、日本を代表する企業の一つとしての地位を確立しています。

これらの企業は、従来の事業モデルにとらわれず、時代の変化を敏感に捉え、大胆な改革を実行することで、グローバル市場での競争力を維持・強化することに成功したのです。

Next: 衝撃的な結末を迎えたシャープと東芝。パナソニックは同じ轍を踏むのか

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