経済にとって必需のロシアの輸出品目
輸出品目は、高品質な原油、天然ガス、非鉄金属、穀物です。いずれも、西側の基礎的なエネルギー、資源、穀物になるものです。これら3品目は、経済にとって必需なので、ロシアを経済封鎖すると表面では言っても、輸入を止めて、他国からの輸入に切り替えるのは難しい。
原油は品質(ロシア産は高品質)によって、精製設備が変わるので、切り替えには2年はかかるでしょう。パイプラインで輸送され、輸入される天然ガスは、船便のスポットの液化LNGに切り替えることができない。陸上の貯蔵タンクと配送網が必要になるからです。
2022年末に、EUは、ロシア産原油の輸入を完全禁止にするとして足並みがそろっているかのように報じられますが、実際の禁輸は難しい。NATO軍を持つ26カ国のEUの会議の特徴は、従来から「言葉では決めても、実際の行動はまとまらない」ことです。EUは善意の合意で作った経済連合です。
2021年には、高くても1バーレル80ドルだった原油価格は、現在1.5倍の120ドル付近です。ロシアは、西側への輸出が減った分を、中国とインドに輸出しているので、エネルギー価格の1.5倍への高騰が、制裁と逆にロシアのエネルギー輸出額を大きくしています(22年1-3月は8兆円:1年で32兆円のペース)。
ロシアの貿易黒字は、中国についで3位に浮上する
西側からの車などの輸入ができないので、2022年のロシアの貿易黒字額は、平年の24兆円から、40兆円に増えるかもしれません。
中国の貿易黒字が6,764億ドル(88兆円:日本の経常収支黒字の倍:2021年)ですから、その約50%です。日本の経常収支の黒字(=外貨買いになる)の位置は、2022年からのロシアに代替されました。
ロシアは、EUの輸入制裁で西側メディアが言うほどは、困ってはおらず、貿易黒字(=海外からの収入)は増えています。
このため、いったんは、SWIFTでのドルやユーロとの交換が禁止され、0.89円へと50%に下がったルーブルは、3月からは急騰し、現在は、ウクライナ戦争前を越える2.07円です(2.3倍に上昇)。原油輸入のためのルーブル買いが増えたことを意味しています。

ロシアルーブル/円日足(SBI証券提供)