fbpx

「在庫は4カ月」世界食糧危機へのカウントダウンが始まる。無効力のロシア経済制裁が世界に引き起こす大災禍=吉田繁治

世界のエネルギーと食糧の危機

米英が主導し、EUを焚きつけている対ロシア経済制裁は、2022年の世界のインフレ率を上げて、逆効果になっています。原因は、ロシアの輸出品目がエネルギー、金属資源、穀物という、西側経済にとって一定量が必要な、GDPの基礎資源だからです。

世界的な熱暑による小麦の不作と、ロシアとウクライナの輸出が難しくした戦争が重なって、世界の4か月分の在庫が切れる「2022年夏からの食糧危機」に向かっています。

高くなっても、外貨準備を取り崩せばいい日本のように、買えれば、まだいい。今回は、高い価格で入札しても、世界の需要量に対して、穀物(小麦・トウモロコシ)が足りないという危機です。後発国では、アフリカ型米騒動になっていくでしょう。

米国はエネルギーと食糧では自立国なので、両方の輸入国とEUの苦しみは、分からない。価格の高騰で、米国の原油メジャーと穀物メジャーの利益が増えるからです。

人間にとって、食品のカロリーでは1週間の不足が許されない。1か月不足すれば、約20億人の後発国の飢餓になっていくでしょう。自然の穀物の育成には4~6か月はかかり、原油のようには緊急提供できない。

まとめて言えば、金融制裁と経済制裁は、EUを不利にして、ロシアを有利にしたのです。

停戦になるとウクライナは小国に陥る

近々、トルコのエルドアン大統領の招待に応じ、プーチンが訪ねます。エルドアン大統領は、ウクライナ戦争の停戦を仲介しています。米国でも、「ウクライナ戦争で何もいいことはない」として、停戦論が出始めたのです。

要所のセベロドネツクが陥落すれば、ウクライナの面積の20%を占める東部が、ロシア軍の制圧下になるからです。東部は、ウクライナのGDPの約80%を作っている工業地帯です。

日本では東海道メガロポリスにあたります。ロシア人が多い東部が制圧されれば、ウクライナは穀物農業だけの小国に落ちます。

プロパガンダ戦をしている米国軍産共同体の内部でも、本当のところでは認めざるを得なくなってきたのではないか。それを示すのが、ダボス会議(年次総会:2022年5月27日)での、軍産共同体のヘッドであり、現在も実質的な権限(=権威)をもつキッシンジャーの停戦を薦める発言です。

6月に停戦交渉があっても、一挙には、停戦にならない。新国境付近でのゲリラ戦は、だらだらと続くでしょう。

Next: 戦争でも下がったバイデンの支持率、武器供与も不可能に

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー