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韓国ユン新政権が頭を抱える山積みの「請求書」。長期低迷期に入る覚悟あるか?=勝又壽良

韓国景気は、本格的な下降局面に入った兆しが出てきた。今年4月にはいって、主要統計が一斉にマイナスに転じているからだ。例えば前年同月比で、生産がマイナス0.7%、消費もマイナス0.2%、さらに投資もマイナス7.5%と、全てがマイナスを記録している。26カ月ぶりの「トリプルマイナス」になった。このままマイナス基調が続けば、10月に「リセッション」(景気後退)という判断が出てくることになろう。新政権は、初っ端から景気後退に見舞われる。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

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※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2022年6月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

韓国にも「スタグフレーション」懸念

韓国は、6月に入って経済の先行きについて、にわかに警戒感を強めている。ウクライナ情勢の不確実性などで物価が上がり続ける一方、中国の封鎖政策による景気鈍化の可能性が強まっているからだ。こうした傾向が続くならば、物価上昇と景気鈍化がともに現れるスタグフレーション(インフレ下の景気後退)が到来する恐れがあると警戒されている。

韓国では、4月に中央銀行である韓国銀行の総裁が交代した。5月には、新大統領の就任と経済の司令塔が変わった。ここで新しい司令官が、韓国経済の現状と未来をどのように分析しているか、注目される。

韓銀総裁は、李昌鏞(イ・チャンヨン)氏である。ソウル大学教授を経てIMF(国際通貨基金)のアジア太平洋局長を務めた経験をもつ。IMF時代は、韓国経済の分析をする立場だっただけに、韓国経済の構造的な弱点を見抜いている。アジア太平洋局長は、IMFでは上から3番目のポストである。

韓国大統領は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏である。検察一筋の人生であったから、経済問題は門外漢である。だが毎日、大統領室へ出勤の際に記者団と会見して、質問を受けており発言している。6月3日には、「経済危機をはじめとする台風圏内にわれわれの庭が入っている」と述べた。「今、家では窓が揺れ、庭では木の枝が揺れていることが感じられないか」とも述べ、経済危機が近づいていることを強調した。

前大統領の文在寅(ムン・ジェイン)氏は、超楽観論を喋って記者団を煙に巻いてきた。景気悪化を認めれば、自分の責任を認めることになるので、「万年強気」を通して経済政策の正当性を主張した。この唯我独尊によって、政策を間違え韓国経済は弱体化している。

10月からリセッションへ

韓国景気は、本格的な下降局面に入った兆しが出てきた。

今年4月にはいって、主要統計が一斉にマイナスに転じているからだ。例えば前年同月比で、生産がマイナス0.7%、消費もマイナス0.2%、さらに投資もマイナス7.5%と、全てがマイナスを記録している。26カ月ぶりの「トリプルマイナス」になった。

このままマイナス基調が続けば、10月に「リセッション」(景気後退)という判断が出てくることになろう。新政権は、初っ端から景気後退に見舞われる。文政権では、景気後退を認めない「カラクリ」を強引に行なったが、こういう「擬装工作」をすべきではない。

「擬装工作」に数えられる1つが、無謀な最低賃金の引き上げである。

文政権が、急速に引き上げた最低賃金を支払えない小規模商工業者や中小企業は、急増していたことが判明した。過去5年間の未払い賃金が7兆ウォン(約7300億円)に達していたのだ。同期間の日本の未払い賃金に比べると14倍も多い額という。

文政権は最低賃金を16.4%、10.9%と2年連続で大幅に引き上げるなど、5年間で合計42%も引き上げた。こうして、賃金をきちんと払えない小規模商工業者や中小企業が続出した。低所得労働者を救うとして推し進められた政策が、未払い賃金問題を引き起こすという皮肉な結果になった。『朝鮮日報』(6月4日付)が報じた。

Next: 韓銀新総裁の指摘する弱点。政策継続性はゼロのお国柄

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