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韓国ユン新政権が頭を抱える山積みの「請求書」。長期低迷期に入る覚悟あるか?=勝又壽良

韓銀新総裁の指摘する弱点

韓銀新総裁は、IMF勤務の経験を生かして、傾聴すべき就任演説を行なった。この中に、韓国経済の抱える矛楯点が、はっきりと浮かび上がっている。要約すると、次のように指摘したのだ。

1)民間主導の質的な成長を目指す。
2)少数の産業と国に集中した輸出も、多角化する構造改革を急ぐべきだ。
3)政府が事業政策を取りまとめ、皆が徹夜で働いても経済成長は期待できない。
4)韓国経済のリスク要因は、「二極化」と「負債」である。

以下に、私のコメントをつけたい。

1)民間主導の質的な成長とは、具体的に何を指しているのか。公営企業の民営化であろう。日本が、1980年代に済ませた国有企業の民営化は、韓国では議論にも上がっていないのだ。先の韓国統一地方選では、空港の民営化を類推させるような発言だけを理由に、野党「共に民主党」が大騒ぎして反対したほど。

韓国は、官尊民卑の社会である。若者は、公務員志望が第一である。次は、大企業であり、後はないのだ。つまり、中小企業は眼中にないという偏った価値観に固執している。朝鮮李朝の官僚であったヤンバン(両班)に憧れる気風が、100年以上経っても消えない社会だ。日本流に言えば、「官員様」が出世頭である。こういう古い仕来りに生きる韓国社会が、その価値観を変えることは至難の業であろう。民間主導の質的成長は困難である。

反日も同じだ。日韓併合が終わって、すでに77年も経つ。それでも、「謝罪と賠償」がセットになって繰返される。時計の針は,止まったままである。

2)少数の産業と国に集中した輸出も、多角化する構造改革を急ぐべきとは、何を指しているのか。ここでは、固有名詞を抜いているが、次のような内容であろう。「少数の産業」とは、半導体を指している。「国」とは、中国を意味する。香港と中国を合わせた韓国の輸出比率は、実に4割を超えている。これでは、「チャイナリスク」は高まるばかりである。

韓国は、こうした中国への輸出比率上昇によって、政治外交面で必要以上に中国の鼻息を覗う「小人」に成り下がっている。この分が、鬱憤晴らしで日本に向けられたのだろう。韓国が、この極端な「中国シフト」から抜け出るには、日本企業との協力しかない。韓国経済界が最近、必死で日本との関係復活に動いている理由はここにある。文政権は、こういう選択肢を妨害した。

政策継続性はゼロのお国柄

3)政府が、事業政策を取りまとめても経済成長は期待できない。韓国歴代政権は、こういう悪しき仕来りを踏襲してきた。新政権が登場すると、必ず新しい政策の旗を掲げる。そこへ大量の補助金をつけるので、企業は一斉に群がる。だが、政権交代とともに、前政権の政策が冷遇され、補助金も減らされ最後は雲散霧消となってきた。こういう,無駄な資金投入を止めるべきである。

同じ保守政権の場合でも、新政権は前政権の目玉政策を継承せず、新たな「旗」を立てた。朴槿惠(パク・クネ)政権は、李明博(イ・ミョンバク)政権を継いだ形である。もともと不仲の関係にあったので、朴政権は李政権の目玉政策を継がなかった。それだけでなく、李政権の目玉政策を冷遇して、最後は枯らしてしまったのである。政策の継続性はないのだ。

4)韓国経済のリスク要因は、「二極化」と「負債」である。これは、実に言い得て妙である。先ず「二極化」を取り挙げたい。力の強い層が、高賃金を得ていることである。韓国の大企業労働者は、高所得層に分類されている。暴力的な賃上げ交渉を行い、ストライキの連発である。これに音を上げた経営側が,法外な賃上げ交渉を飲まされてきた。生産性を上回る賃上げである。大企業は、この賃上げコスト上昇をカバーすべく、中小企業製品を買い叩いている。こうして、大企業と中小企業の賃金格差が拡大するシステムが出来上がった。

「負債」は、所得の「二極化」に合わせて、低所得層が「負債」を増やして消費で追いつこうとする哀しいまでの行動であろう。韓国は、低所得層ほど借入れに走る事実がある。その結果、利払いも元金の返済もできず、政府が最後に「徳政令」を出して「借金棒引き」で救済している。財政資金で尻ぬぐいするのだ。徳政令は、頻繁に行なわれている。低所得層は、あらかじめそれを計算している節がある。徳政令は、一度始めると必ず継続する悪循環に陥る。

日本では、鎌倉時代から室町時代にかけて、朝廷・幕府などが債権者・金融業者に対して、債権放棄(債務免除)を命じた法令が存在する程度である。韓国は、現代でも行なわれているのだ。これだけでも、韓国における契約概念の欠如が明らかになる。旧徴用工問題や旧慰安婦問題は、契約概念の欠如を示している。

韓国銀行の李総裁は6月2日、「インフレが落ち着いた後、韓国やタイ、中国など人口高齢化問題に直面した一部の新興国で、物価安と低成長の環境が到来する可能性を排除できない」と警告した。これは長年、IMFでアジア太平洋局長を経験した李氏ならではの警告と読まなければなるまい。

Next: どの国も未来は暗い?日本・中国・韓国の生々しい人口動態の実態

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