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そごう・西武売却、米ファンド「優先交渉権獲得」で百貨店はついに衰退へ。今後の展開と手放すセブン&アイの次の戦略は?=澤田聖陽

セブン&アイ・ホールディングスが進めている百貨店子会社そごう・西武の売却について、米ファンドのフォートレス・インベストメント・グループが優先交渉権を得たことが分かった。提示額(株式購入額)は2,000億円を超えると報道されている。そごう・西武は今後どんな運命をたどるのか?百貨店が衰退した原因とセブン&アイの次の戦略について解説したい。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)

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※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2022年7月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。

※毎月第3木曜日19:30よりまぐまぐ!Live配信予定「『投資に勝つ』ための最新ニュース解説
投資に勝つにはまず第一に情報分析。「投資に勝つ」という視点から日常のニュースをどのように読むべきかを、この記事の著者で、元証券会社社長で現在も投資の現場の最前線にいる澤田聖陽氏が解説します。視聴方法はこちらから。

そごう・西武売却で米フォートレスに優先交渉権

セブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイ)が進めている百貨店子会社そごう・西武の売却について、米ファンドのフォートレス・インベストメント・グループ(フォートレス)が優先交渉権を得たことが分かった。

フォートレスの提示額(株式購入額)は2,000億円を超えると報道されている。

フォートレスはソフトバンクグループ(SBG)傘下(SBGは所有しているが、経営関与については制限されている)の投資ファンドであるが、日本でも不動産会社のレオパレス21やゴルフ場運営のアコーディアゴルフ、雇用促進住宅のバルクでの購入(現在は低価格賃貸住宅「ビレッジハウス」として運営)などの実績がある。

またREITのインヴィンシブル投資法人のスポンサーでもある。

米国のフォートレスは、バイアウトファンドであり、経営破綻企業に対してのディストレス投資を得意とするファンドであるが、日本国内では不動産が絡む案件への投資に特化しているようである。

今回のそごう・西武への投資も、百貨店事業の再生を行うというよりは、同社が保有する不動産にうまみがあると考え、投資を検討しているものと見られている。

ちなみに今回の株式譲渡額は2,000億円程度であるが、親会社からの約1,000億円の借り入れも含めて総額3,000億円程度の借り入れがあるようであり、借り入れの肩代わりも含めた投資総額は5,000億円程度になると言われている。

旧来型の百貨店事業の再生は不可能

セブン&アイは、2006年にミレニアムリテイリンググループ(当時のそごうと西武百貨店の持株会社)を買収金額2,000億円超で買収して子会社化した。

現在はそごうと西武を合わせて10店舗となっているが、買収当時は28店舗存在していた。

そごう・西武は地方の店舗が比較的多く、買収後に収益的に立ち行かない店舗をどんどん閉店していくこととなった。

売上についても、2007年2月期には9,883億5,700万円と1兆円近くの売上があったものが、2022年2月期には4,568億4,200万円と半分以下に減少している。

ちなみに百貨店業界全体の売上高を見ても2007年には7兆6,826億円であったが、2021年には4兆4,182億円と大幅に減少している。(百貨店業界の売上高のピークは1991年の9兆円7,130億円)

30年で業界の売上高がピーク時の45%になってしまったというのが百貨店業界の現状なのである。

セブン&アイがミレニアムリテイリンググループを買収した2006年当時は、ピーク時よりも百貨店の売上は減少しているものの、一般的には百貨店業界の売上が現在のレベルまで落ち込むとは考えられていなかった為、セブン&アイの商品力やネットワークで、買収したそごう・西武を立て直せると目論んでいたのだと思う。

しかし結果としては、買収後約15年間店舗の撤退と売り上げの減少、赤字に苦しめられ、M&Aとしては完全な失敗であったと考える。

GMS事業、コンビニ事業とのシナジーも個人的にはほとんど無かったと思う。

Next: なぜ百貨店は衰退したのか。一等地の西武が「ヨドバシカメラ」になる?

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