16頁~「中銀は二度と金地金を調達しない」という有用な誤解
反対の意見として、この文章には、自由な金市場での金価格の動きを鎮める効果もあるので有用であるとの意見も出てきた。この文章が公開されると、一般の文意の受け取りとして、最初の解釈が広まった。つまり、中央銀行は二度と一般自由市場で金地金を調達しないと決定したことになった。
その後、米国の金融当局を初めとする各機関は、世界各国の中央銀行がこのことを厳格に遵守しているかどうかの監視を開始したのだ。<中略>
IMFの主要各国の中央銀行は巨大な量の金準備を保有している。例えば、オランダ中央銀行は、現時点での金価格で計算して外貨準備総額の66%を保有する。最も困った問題は外貨を対価として金準備を売却する場合の決められた手法が存在しないことなのだ。
G10主要国およびスイスは金価格を規制する方法を考えて、中央銀行間同士で金準備の売却、購入ができるような条件を作る必要があった。1979年のベオグラードでのIMF年次総会の際にこの議題を取り上げたが、残念ながら十分な合意に達せず、一般の自由な金市場で金価格を規制(市場介入による価格抑圧、すなわち金地金の売却)することも合意に達せず、結局は決まらなかったのだ。
17頁~金価格を下落させる介入操作が必要であると信じる
小規模な価格介入操作による金価格の下落――ただし、その後大きな反発が起きない程度の小規模な――が必要だと信じている。
以上、非常に端折った紹介でしたが、大意は紹介できたと思います。
ベトナム戦争の戦費調達で米ドルが大量印刷され、その結果、米ドルの価値が下落すれば、諸外国から米ドルの金地金への兌換要求が殺到して大量の金地金が流出する。最後には金兌換要求に応じることができなくなるため、これを拒絶する為には、金地金と米ドルのリンクを外すしかない。ところが、この措置そのものが、ますます米ドル等のペーパーマネーの信用を失墜させ、その結果、金価格を暴騰させてしまう――
そこで、この講演で語られたごとく、「一般の自由な金市場で小規模な売却をして価格を下げる。ただし、その規模はあくまでも市場の関心を引かない程度、すなわちバレない程度にする」「さもなければ、逆に金価格が反騰する可能性があるので注意して売却する」といったような秘密のゴールド価格介入操作を、他ならぬBISが「今後やらなければならない」指針として打ち出し、今日に至っているのです。
これは推測でも妄想でもなく、歴史的事実であることが、この講演録から理解していただけると信じます。
※太字はMONEY VOICE編集部による