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“風見鶏”岸田首相が組閣で隠した爪。安倍派の首を真綿で締める策士の仮面はいつ外すのか=山崎和邦

爪を隠す風見鶏の岸田

元々、宏池会は「公家集団」と言われていた。「インテリではあるが、剛腕ではない」の意である。しかし、宏池会というのは本来、保守本流である。

中曾根康弘は、田中角栄生存中には「風見鶏」と言われていた。その風見鶏が田中角栄のクビキから離れた途端に大きな仕事をして、日本の形を変えた。岸田は今、風見鶏だ。経済政策も何か言い出して、市場の反乱に遭遇すると直ちに「…という選択肢もあるという意味です」と言い換えて、事実上撤回してきた。

これでは腰の据わった経済政策は行えない。こういう経緯が株式市場に全て表れている。「風見鶏・岸田」の経済政策が今の株式市場によく表れている。ところで、時間をかけて安倍派を弱らせて、風見鶏が風見鶏でなくなった時に開成高校出身者から優れたブレーンの候補が生きてくると思う。そこから先でなければ、岸田内閣の経済政策は読めない。

今は、風見鶏を演じている最中である。株式市場にもよくそれが表れている。

間近に迫るデフレ脱却

「日銀の異次元緩和」は安倍内閣になって黒田日銀総裁から始めたと錯覚している人が多いが、実はこれは10年前の4月、つまり民主党政権の末期の白川総裁の時代から始めたものだ。

異次元緩和というのは利子の操作だけではなくて、札束の量を操作することを当時は言った。それを開始してから10年目の今、消費者物価指数は日銀が標榜する2%目標を初めて超えた。皮肉なことに、日銀の力によるよりも海外要因によるところが多かった。日銀短観の6月期では販売価格判断の上昇幅が仕入れ価格判断の上昇幅を上回り、企業の価格転嫁の進捗を示していたように見える。

これを見て、黒田総裁が「家計の値上げ許容度が高まっている」と言って、世論の批判を浴びて、撤回を余儀なくされたことがあった。しかし、調査結果で言えば、値上げ後も同じ店で購入を続ける消費者が増えているという結果が出ていることは事実である。

消費者物価指数の伸び率が2%を超えたのは、2008年夏の商品相場の高騰期であった。2008年当時は、仕入れ価格が大幅に上昇しても販売価格の上昇はわずかだった。最近の円安の影響を考え合わせると、今年の秋にはインフレ率が3%に接近するシナリオも視野に見えてくると言っているのは早川英男(元日銀調査統計局長)である(週刊東洋経済誌8月13~20日号)。

予想をはるかに上回る最近の欧米の物価上昇は、インフレ見通しの不確実性の大きさを改めて確認するものになった。金融政策でも、財政政策でも、デフレは簡単には脱却できないという思い込みに依存することは避けるべきであろう。

金融危機、25年前は日本発、今回は中国発か

「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」

投資家としても有名な米作家のマーク・トウェインが残した言葉である。

差し当たって現在の「韻を踏む」から言えば、1995年から25年目の今日現在、25年前の世界2番目の規模の日本発の金融危機だった。1997年11月に山一證券・三洋証券という世界的大手証券と北海道拓殖銀行という大手都銀が1ヶ月で連続破綻。バブル崩壊後の不良債権処理の遅れが金融危機の形で表面化した。日銀特別融資などを駆使して、日本の危機が世界に連鎖するのを防いだ。今回の発信源は日本ではなく、中国だ。

当時、日本が世界で二番目の経済規模だったが、今は世界で二番目の規模は断然中国である。しかも当時のような純粋な金融部門の危機ではなく、中国が発信する危機は米下院議長の台湾訪問などの地政学上のことも含む(97年にも当時の下院議長が台湾を訪れて台湾総統と会談した)。今回も似たようなことをやった。当時は軍事大国ではなかった中国は、今度は軍事大国であるから軍事演習で応じて米中の緊張が高まった。25年前の韻を踏むならば、中央銀行が「日銀特別融資」を駆使して日本の危機が世界に連鎖することを防いだが、中国は何をやるだろうか? この点が不明である。

ただ、中国もバカではない。不動産バブルの危機や地政学上の危機を自ら抑えこまなければ、世界に冠たる大国にはなれないことは、自ら承知しているはずである。

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