岸田政権が掲げる資産倍増計画で「貯蓄から投資へ」とスローガンが叫ばれている。しかし、金融知識を持たない消費者が、銀行や証券会社のセールス口車に乗り大損し、手数料だけを絞り取られるケースが続出しています。(『億の近道』街のコンサルタント)
20数年間を金融(主に証券)会社で過ごし、投資銀行業務や事業育成の業務を担当。「金融機関に籍を置く(安全な)立場で客観的なことを言うより、いっそのこと経営者と同じ立場で事業拡大のお手伝いを出来ないものか」と思い立ち、2005年春に証券会社をリタイアしてコンサルティング会社を設立。
投資してはいけない金融商品とは
先日の日経新聞で「仕組債(EB債)のクレームが増え、金融庁が実態調査に乗り出している」との記事がありました。
この件については以前から何度も書いており、直近では7月7日のメルマガにも書きました。この金融商品は全く投資に値しない商品であることです。
米国株で大損投資が続出
先日は外資系証券で働く友人に聞いたところ、今年の春以降はEB債が連日ノックイン(株価下落で株式で返ってくる)しているそうです。設定時の60~70%のエクササイズ条件で組成されたEB債(主に米国株ですが)が、当時の6割の株価で手元に返され、そして「ありゃ~」と思っているうちに5割、4割の株価になってしまっています。
販売時には「60%のノックイン価格なら、まず安全ですよ」「5%程も上昇すれば利息と共に元本は100%で返ってきますよ!」と勧誘されて、10数%の高利回り商品と思って購入したのに、実は手数料ばかりが抜かれていて、今のような株価下落時には投資家には評価損となった株式が戻ります。
当初は安全だと思って投資した数1,000万円が半分とかになる訳で、これを取り返すのは大変です(汗)
ここ数年、証券会社や銀行は、米国株式、米国投資信託、米国株EBと…なんでもかんでも米国株式頼みで商品を作り、投資家に販売してきました。
まあ、ざっくりと一例ですが、変動率の高い株式で組成したEB債なら組成会社(アレンジャー)が7%、販売会社が7%ほどの手数料を抜いて販売しています。計算上は投資家が儲かる確率は限りなく低いとしか言えない金融商品を、さも立派な、儲かりそうな商品だとして販売し、多額の手数料を得ていた訳です。
某IFAの(独立系ファイナンシャル・アドバイザー・セールスマン)であれば、毎月1億円程も販売すれば5,000万円もの年収を得られました。どこかの証券会社に所属して営業するより、腕に自信のある営業マンなら、それこそ転職したくなる訳です。
しかしながら、もうそんな時代も終わりました。
こんな投資価値の低い商品がいつまでも残るとは思えませんし、昨年辺りからは(腰の重い、業界擁護の)金融庁も、杜撰な説明があったのではないかと問題視しています。
とっくの昔から酷い商品だと知っていたのに今頃になって…(呆)。
行政の全てが遅い。
裏を返せば、日本国内に真面な投資商品が無かったとも言えます。
預金金利や国債の金利は雀の涙、株式は上がらない、投資商品は手数料ばかりで、ここ30年程、一般の国内投資家は良い思いをしたことがありません。儲からないのだから「貯蓄から投資へ」などと、資金が動く訳もありません。
ゴキブリやシロアリの利権のお陰で、国内市場(経済)の成長が乏しく、大手上場企業(財界)の経営者が守られるばかりであり、かつ投資家のための税制も欧米からは数周遅れです。
まあ、愚痴ばかりで申し訳ないのですが…そんな環境であることをご理解いただいた上で様々な投資を研究、検討していただければと考えている次第です。
(街のコンサルタント)
出典:億の近道
リスクの説明をしない証券会社
「素人目には分かりづらいリスク部分をきちんと説明しているのか?」と言う書き方になっていましたが、そもそも日本で大々的に販売されているEB債は、その商品の組成において収益性(リスク・リターン)に大きな問題が潜んでいることです。損失が発生するときには大きな損失となり、利益が出てもわずかな額に留まることが指摘されていません。
つまり「ハイリスク・ローリターン」の商品設計になっている訳です。
それでも昔のEB債の組成ではオプションのノックインレベルの設定次第の面がありましたが、ここ数年はノックアウト・オプションも組み込み5~10%程度の株価上昇でも、早期償還となるトリガー条件を付けることで、株価が上がれば早期償還になり、その資金で新たなEB債を勧め易くする工夫がされています。
つまり、早期償還となった資金で新たに購入することを続ければ、結果として頻繁に同じ商品に乗り換えていることになります。そして購入の都度、1年以内の短期の商品であるにも関わらず、法外な手数料が(投資家の目に触れずに)抜かれています。
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