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コロナ禍で放置された「中高年ひきこもり」60万人に増殖、老いた親に限界が来たらどうなる?迫る日本壊滅のタイムリミット=鈴木傾城

十年以上も自室でひきこもるなど想定していなかった

その中で、何とか仕事を見つけて社会人としてのスタートを切れた人たちも大勢いる。意に添わない会社や職種でも「仕方がない」と割り切って会社に入った人たちは、かなりいたはずだ。

しかし、何をどうしても仕事が見つからなかった若者もいれば、条件が悪い仕事に就いてしまって早々と退職せざるを得ない状態になってしまった若者もいる。

彼らの一部が挫折感に打ちのめされ、心が折れ、そして完全に自信喪失して自宅にひきこもるようになっていったのだ。

幸か不幸か、彼らの親は日本の高度成長期の恩恵に与った世代だった。年功序列で、終身雇用で、貯金や資産もそれなりにあった。挫折した子どもの面倒を見るだけの余裕が親にあった。

だから、親は挫折して打ちのめされた子どもが「しばらく」自宅にひきこもるのを許した。まさか、それから十年以上にも渡って自室でひきこもるなど親は想定していなかったはずだ。

就職活動に失敗して心が傷ついた子どもを、数ヶ月そっとしておけば、子どもは立ち直って再び挑戦してくれると考えていた。

実際、「このままでは駄目だ」と考えて、再び就職活動をして親の自宅から通う形であっても、何とか働けるようになった若者もいる。しかし、それすらもできずに、ますます意固地になってひきこもってしまった若者もいる。

そんな若者が40代になり、あるいは50代に入り、いまや61万3,000人の「群像」となって社会をじわじわと覆い尽くしているのである。

「ひきこもり」を社会に戻すのは容易ではない

社会から接点が切れた子どもたちが「ひきこもり」となって、数十年に渡って自宅から一歩も出ないで親に寄生して生きている。

親も高齢化して支えきれなくなっている。親が死んで何もできない子どもが取り残される。

親にも寿命がある。その前に、2022年以後の物価上昇が進むなかで、働かない子どもを抱えて生きるにも経済的に限界がくる。

親が子どもの面倒を見ることができなくなってしまったら、社会と長らく接点が切れていた彼らは取り残される。

彼らに「働け」と言って、職業訓練でもしたら働けるようになるのだろうか。

そうなって欲しいが、それは甘いかもしれない。「ひきこもる」ように生きてきた人間が社会で大勢の人に揉まれて生きていくというのは、もはや難しいのではないかという意見も多い。

本人をひきこもった世界から現実世界に連れ戻すのも難しいし、仮に連れ戻したとしても苛烈な社会に耐えられる精神力なのかという問題も出てくる。

今は普通に生きている人間ですらも、非正規雇用で酷使されて心を病んでしまうような時代である。

一方で人手不足も社会現象としてあるのだが、高度な能力を有する人材か、キツい労働に耐えられる人材を求めているのであって、実戦力にも即戦力にもならない人材は最初から弾かれるようになっている。

Next: 迫るタイムリミット。ひきこもりを抱える日本は予断を許さない状況に

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