政府の狙いはどこにある?
岩田:突然のように出てきた「デジタル給与」ですが、これをなぜ政府は推進しようと考えたのでしょうか?
A氏:1つは、社会のキャッシュレス化・デジタル化の推進です。それによって生活の深いところまでキャッシュレス化を進めようという狙いがあります。
もう1つは、外国人労働者が日本の銀行口座を持ちにくいことから、銀行口座が無くても給料を受け取れる手段を作ろうという狙いもあります。
私たちの生活はどう変わる?
岩田:キャッシュレスというレベルで考えると、ポイント還元事業のときとどう違うのでしょうか?
A氏:これまでキャッシュレスというと、店頭での買い物を現金から電子マネーに置き換えることであり、その使い方に利用者の関心が集まっていました(筆者注:これを「第1次キャッシュレス革命」と呼んでいます)。
そして今後は、QRコード決済の口座に振り込まれた給与の電子マネーを現金化することなく、そのまま送金に使ったり、買い物に使うことなどに関心が移っていくでしょう。キャッシュレスが生活全体の幅を広げる新しい段階に入ったと言えます(筆者注:これを「第2次キャッシュレス革命」と呼びます)。
岩田:たしかにPayPayや楽天ペイを毎日使っている人にとっては、その口座残高に常に電子マネーが入ってくるとすれば、いちいちチャージする手間もなくなりますし、残高に入ってくれば日々チャージする手間が省けますから、キャッシュレスがますます進むことになりますね。
給料が日払いに?電子マネーの現金化も簡単に
A氏:新しい利用方法としては、給与の出し方が変わってくるでしょうね。これまでは月に1度だったものが週払いとか日払いとか自由にできるので、給与の概念が変わってくるでしょう。仕事も変わってくるかも。
岩田:振り込まれた電子マネーはすぐに現金になるんですか。
A氏:すぐに現金化することもできますので、キャッシュレスだけでなく、キャッシュの使い勝手もさらに便利になります。政府の審議会からは、給与が1円単位で引き出せ、月1回は手数料無料でATMからの引き出しが可能になるようにしようという提言も出ています。
ちなみに審議会によると、このコード決済残高の上限は100万円で、それを超えた場合には、本人が指定する銀行口座に自動的に移し変えられるようで、こちらも便利です。
コード決済業者のメリットは?
岩田:コード決済業者のメリットはどんなものがありますか。
A氏:コード決済業者にはこれまで未知の領域であった顧客の給与利用状況をつぶさに把握できるようになりますから、そのデータを使えばさらにサービスの充実を図ることができます。
新たにこうした計り知れないメリットが得られるので、資金移動業者にとっては、クレジットカード陣営に代わってキャッシュレス時代の中心バッターになるチャンスが巡ってきたといえるでしょう。