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まもなくロシア軍が全面攻勢か。日本で報道されぬウクライナ戦争“12月10日〜19日”の転換点=高島康司

<ロシア軍の優勢で、勝利したらどうなるのか?>

全面的な攻勢の結果、ロシア軍が勝利する可能性は極めて高い。

いま西側のメディアではロシア軍の損害ばかりが報道されているが、ウクライナ軍の損害の方がはるかに大きい。西側のメディアはプロパガンダだ。ロシア軍が全面攻勢に出た場合、ウクライナ軍に勝ち目はないと思う。

しかし、そうなったときが一番危険だ。

アメリカはロシア軍の勝利を認めることは絶対にない。元CIA長官で米中央軍の司令官だったペトレイヤス大将は、NATO軍ではなく欧州有志連合軍のウクライナ派兵を提案している。おそらくそうなるだろう。この軍は次のような編成になるはずだ。

米軍、ポーランド軍、ルーマニア軍がそれぞれ4万人から5万人、英軍が数千人程度。

私がドイツ軍やフランス軍の司令官に確認したら、ウクライナ支援のため両軍とも兵力不足で戦うことができない状態だといった。現在ある兵器や砲弾の在庫では、フランス軍は4日しか戦闘できない。これでは米軍と一緒になってウクライナに派兵することはできない。

また、ルーマニアにはモルドバの飛び地でルーマニア人が多く住む沿ドニエストル共和国に駐屯するロシア軍を追い出すこと、そしてポーランドは、戦後ウクライナに有利に決められた国境線の回復という2つの野望を持っている。これが、ルーマニアとポーランドが欧州有志連合軍に参加してウクライナを軍事的に支援する理由だ。

だがこうした軍が結成され、ウクライナに派兵されるとなると、米軍とロシア軍が直接戦闘することになる。また、欧州有志連合軍の結成で、ウクライナ支援に消極的になりつつあるドイツやフランスとの間に齟齬が生まれ、NATOが解体する動きを速める可能性もある。

<米外交政策を担うエリートの危険性>

ところで、いまのアメリカの外交政策を主導しているネオコンのようなエリートは大変に危険な人物たちだ。彼らは、国際情勢の背後にある歴史的な事実に関心もないし、知ろうともしない。「自由と民主主義を守る」という実に単純なイデオロギーだけで、他国を侵略し破壊する。以前私は、米軍の高官になぜアメリカはロシアを敵視するのか聞いてみたことがある。すると彼らは、「ロシアは悪い国だからだ」とか、「プーチン政権を倒すと民主主義はロシアで自然と拡大する」などと実に馬鹿げた答えしか返ってこなかった。

今回のロシアのウクライナ進攻には、歴史的な背景がある。そして、ロシアのウクライナに対する安全保障上の懸念には正当性がある。歴史的な背景を見ると、これは明白だ。

ロシアはかつてのソビエトではない。現在のロシアには、ソビエトのような世界帝国を作る野望もないし、能力もない。ソビエトと比べるとはるかに弱くなっている。もともとロシアの願望は、西側の一員として受け入れれ、西側の国際秩序の枠内で大国として発展することだった。中国は独自の国際秩序を形成する計画を持つが、もともとロシアにはそのような意図も計画もなかった。

アメリカはNATOを一方的に拡大させ、ロシアの足元にまで迫ってきたので、ロシアは反応せざるを得なかったのだ。ロシアを中国の側へと追いやった責任は、アメリカのエリートにある。歴史を理解せず、イデオロギーだけで世界を単純化して見るネオコンのようなエリートを完全に追い払わない限り、アメリカは戦争中毒から抜け出すことができないだろう。いますぐにでも、こうしたエリートを排除し、まともな外交政策を立案しなければならない。

Next: 迫るロシア軍の大規模な攻勢。時期がずれても実行される可能性は高い

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