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まもなくロシア軍が全面攻勢か。日本で報道されぬウクライナ戦争“12月10日〜19日”の転換点=高島康司

<ウクライナ戦争の性格の変化>

当初プーチンは、ウクライナと全面戦争をする意図はまったくなかった。プーチンの当初の目標は、次の3つを実現することだった。

1. ウクライナに「ミンスク合意」の順守を確約させ、ルガンスクとドネツクの2つの共和国には完全な自治権を与えること
2. ウクライナがNATOに加盟しないことの確約
3. 2014年にロシアが併合したクリミアの承認

プーチンはいわば脅しのためにウクライナの北部、南部、そして東部に軍事進攻した。プーチンはこれでウクライナはすぐに交渉を始め、この3点を実現できるものと思っていた。したがって進攻してからしばらくの間は、ロシア軍は民間のインフラ攻撃を避け、民間人の死傷者をできるだけ抑えるように努力していた。

しかしプーチンは決定的なミスを2つ犯した。それは、アメリカの武器支援の規模の大きさを予期できなかったことと、ドイツがこれほどアメリカ寄りになるとは思っていなかったことだ。このためウクライナ軍は欧米の支援で最新兵器が装備され、強化された。

ウクライナに軍事力で脅しをかけ、政治決着を図って目標を実現するというプーチンのプランはうまく行かなくなった。そのためプーチンは戦争の性格を全面戦争に改め、ウクライナの完全制圧とゼレンスキー政権の崩壊へと目標を変更した。この変更後、火力発電所などウクライナ全土の社会インフラが攻撃の対象になっている。エネルギー関連施設が破壊されると、次の3つに甚大な影響が出て来る。

1. 電力のみならず浄水場が止るので、水の供給ができなくなる
2. 停電で鉄道網の一部が動かなくなるので、軍の移動に深刻な問題が発生する
3. ウクライナ軍は鉄道で軍の補給を行っている。鉄道が動かなくなると、軍の補給路は寸断される。

このように、火力発電所の破壊でウクライナは必要なエネルギーの確保や軍の移動や補給路の確保が困難になるため、ウクライナ軍は弱体化する。

<これから始まるロシア軍の全面攻勢>

発電所の破壊でウクライナが弱ったタイミングで、ロシア軍は全面攻勢をかける。ロシア軍は兵力不足と兵器不足に悩んでいると欧米では報道されているが、そのようなことはない。ロシア軍は次の全面攻勢を行うだけの十分な兵力がある。

1. 情報機関の衛星画像分析では、投入可能なロシア軍は54万人いることが分かっている
2. さらに衛星画像解析から、5000両の軍用戦闘車両、そのうち1500両が戦車、1000両の自走砲、1000機のドローン、数百機のヘリコプターと航空機、そして爆撃機を配備している
3. ウクライナの土壌は「チェルノーゼム」と呼ばれる肥沃な黒土である。泥の状態では軍用車両は沈み込み、動きが取れなくなる。黒土が凍結するまで作戦行動は難しい。凍結するまでには、氷点下の気温が2週間続くことが必要だ。12月10日から19日までにはこの条件は整う

このように指摘し、12月10日から19日頃にロシア軍の大規模な攻勢があるとしている。

ウクライナのロシア軍最高司令官のスロビキン大将に与えられた任務は、ウクライナ戦争を終結させることである。そのためには、ウクライナ軍を徹底的に破壊するだろう。ロシアにはその能力がある。

Next: 最も危険なシナリオ?ロシア軍が勝利したらどうなるのか

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