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元オウム上祐史浩が語る「宗教二世」山上被告の弱さと旧統一教会の欠陥。第二の麻原は生まれるか?【前編】=鈴木傾城

時代の変化に適応できなかった教団側にも原因

鈴木:リベラルな価値観によって、環境が温室育ちになった。そこで問題が起きているということですね。

上祐:これが宗教二世の人たちの教団批判の高まりの背景にもあるかもしれません。今の世代の人たちは、昔1970年代、80年代に統一教会に入った人と比べて、教団組織により苦痛を感じ、これが教団への批判の原因の一つになっているかもしれない。

ただし、この問題は、実は前の世代から始まっていて、戦後、だんだんと弱くなってきた面があると思います。容疑者の場合も、父親が困難に耐えられず逃げて自殺しています。容疑者の弱さは、親の世代の弱さにも原因があり、継承されているのでは。

こうして、新しい信者の入信が減って、宗教教団は、組織維持が苦しくなってきています。その結果、既存の信者から深堀りをするように多額の献金を集めたり、既存の信者の子どもを入信させることになる。しかし、その二世たちは一世とはメンタルが異なるから、それが今回は裏目に出てしまった。これが統一教会のはまった罠だったのではないでしょうか。

こうして、教団は依然として問題が多いが、昔と比較すれば穏健になっているように思いますが、社会の方はもっと大きく変わっているがために、今回の批判は、30年前の時とは比較にならないほど強いのではないでしょうか。変わりゆく社会・時代に対する教団側の適応不全です。

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「社会全体が再びチャレンジ精神を取り戻す必要がある」

鈴木:経済困窮貧困と格差の問題なんですけど、今の日本はもう1990年代ぐらいから、もうバブルが崩壊して、ずっと成長しない国になってしまいました。その中で若者は非正規雇用者で雇われて使い捨てにされるような、雇用形態になってしまいました。豊かになれない人たちがどんどん増えてきて、今はもう1,200万人ぐらいが年収186万円とかで、すでに低所得層になってしまっているわけです。

こういった、どんづまりの国になってしまった日本、成長できない国にいるという閉塞感みたいなものを、若者は持ってると思うんですね。先ほどおっしゃってた若者が弱くなってるっていうことなんですけども、経済的に豊かになることもできないという絶望感もあって、日本に失望している、そういうところもあるんじゃないかなと思うのですが、そのあたりはどう思いますか?

上祐:それは重要な問題ですよね。その通りだとも思うのですが、私は、ここで、少し視点を変えて、長期的な視点から考えてみたいと思うのです。

まず、80年ほど前の日本の若者は戦後にあって、その中から歯食いしばって立ち上がっていったと思います。今はバブル崩壊後の長期デフレの中にいますが、そこから立ち上がろうとする雰囲気は強いかというと、少なくとも今はまだあまり感じられない。

それは戦後より状況が厳しいからではなくて、戦後の方が当然状況は厳しい。若者の経済問題と言っても、戦後のように飢えているわけではない。物は溢れているし、それなりに暮らしていける、という感覚がある。だから、今のままでもいいんじゃないかと言う、一種の諦観があるのではないでしょうか。

そして、こうした若者の心理状態は、若者に限らずに、社会全体のものではないでしょうか。そのためには、今後は、バブル崩壊後に落ち込んだ状態から、社会全体が再びチャレンジ精神を取り戻す必要があるのかなと私は思います。

鈴木:「チャレンジ精神を取り戻す必要がある」というのは、逆に言えば今はチャレンジ精神がないということなのですが、そういう若者を見て上祐さんはどういう思いますか?

上祐:はい、これまでに言っていることと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、私は、これまでの流れが、そろそろ転機を迎えるのではないか、と思うところがあるんです。

つまり、若者に限定しての話ではないのですが、社会全体にもう一度がんばらないと、この国ちょっと危ないんじゃないかという危機感が、徐々に募ってくるのではないかと。そして、そういう社会全体の動きの中ならば、若者もチャンレンジしていけるんじゃないのかな。上の世代が、デフレでシュンとしたままなら、若者も変わらないかもしれませんが。

日本は、依然として第3位の経済大国で、寿命は世界最長で、外国に比較して安全で、衛生的だし、新型コロナの被害も比較的少なく、その意味では恵まれた国だから、「なんでがんばらなきゃいけないの?がんばってもバブル世代にように討ち死にするのでは」という心理状態にもなるかもしれない。

しかし、少子高齢化・人口減少も相当に進んで大変なことになるから、異次元の少子化対策などと言われ始めた、ロシアの侵攻後に中台紛争の危機感もあり、何十年も出来なかった大幅な防衛費の増額をする流れになった。こうして、ある意味で、お尻に火がつくという状況になるのが、向こう10年になるかもしれないと感じています。

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