fbpx

元オウム上祐史浩が語る「宗教二世」山上被告の弱さと旧統一教会の欠陥。第二の麻原は生まれるか?【前編】=鈴木傾城

宗教も「お金」に支配される時代

鈴木:今の社会というのは統一教会もそうですが、どの宗教団体といえどもお金がないと運営できない社会になっています。宗教も資本主義に支配されているような状況に見えます。

上祐:はい、その点については、私も専門なのでいろいろ勉強しています。まず、宗教は伝統宗派も新興宗教も、平成期以来、急速に衰退しています。それはオウム真理教などの問題もありましたが、実は世界的な傾向であり、根本的な原因としては、人生観、価値観の大きな変化が原因ではないかと宗教学者の島田裕巳氏が主張しています。

今の時代、病気や貧困などの現世の苦しみは、宗教に頼らずとも、医療技術の進歩や社会福祉制度の整備で対処できるようになりました。さらに長寿化しているので、宗教の売りの「死後の来世の幸福」よりも、「長い老後の不安と備え」の方に関心が移っていく。お金も、来世のために宗教に献金ではなく、老後に備えるようになる。

これは、統一教会の宗教二世の教団批判の背景にもあると思います。宗教一世は、教団に献金してしまい、自分の老後の備えの年金もない人がいる。すると、宗教二世は「その親を俺たちに養えというのか?」と反発し、教団からお金を取り戻す必要があるという話になる。そして、老後の問題への対処も、今の時代は、最終的には、お金ですよね。昔のように田舎の血縁・地縁の親族集団による介護は崩壊し、少子化の中で独り暮らしの老人も多い。人口全体3割は単身者。するとお金で備えるしかないとなる。

この点に関して、宗教教団が「財産全て献金した信者の老後は、教団が全て面倒見る」というのであれば、多額の献金は老後の年金替わりとなるから、批判は和らぐかもしれない。本来、宗教は信者仲間の生活共同体の側面がありますから。

しかし、旧統一教会は、面倒を見ると言っても、国の生活保護の受給を信者に申請させるのでしょう。教団丸抱えで無料老人ホームを用意するわけじゃない。すると、二世から見れば、結局、日本から韓国にお金が出るだけとなる。こうして、今現在、宗教は、この資本主義社会の中で機能しなくなり、衰退しつつあると思います。

鈴木:要するに「金こそすべて」みたいな、お金がある方が強い、哲学とか宗教とかそんなものを勉強するよりも、そしてすがるよりも、お金があった方がいいんだ、老後だって金がいるんだ、そういった風潮になってきているわけですね。

上祐:長くなった老後の備えに関心が移り、来世の幸福を説く宗教には関心が遠のき、お金を出さないという意味ではそうだと思います。だから、これからの宗教は、長寿時代のニーズに対応する必要があると思います。長く辛い老後を送らないですむ利益を与えるような宗教的な知恵が必要だと思います。

老後にお金の備えが必要と言っても、必要なお金は、健康状態に大きく左右され、健康なら医療費もかからず、長く働くことができますから、健康長寿を助ける宗教があれば、それは助かるでしょう。

また、老後の問題は物質的な問題だけではなく、今大きな問題になりつつあるように、大勢の高齢者の孤独の問題があります。単身者なだけでなく、社会的な交際がない高齢者。孤独な中で、年間3万にのぼる孤独死が生じる。心身の健康状態の悪化により、医療費も増大して、金の問題にもなる。

そこで、宗教教団が、その伝統の共同体形成の能力を活かして、孤独の問題を緩和するコミュニティを提供する。これは一部の宗教団体では、地方自治体などとも連携して、既に取り組みが始まっていると聞いています。

老後のための年金は、一般の人でも何割か払っていな人がいますが、宗教教団は、自分たちばかりに献金させず、信者を指導し、年金の加入・保険料の支払いを徹底させて、国の公的年金制度を支える。長寿社会と対立するのではなく、長寿社会と共存共栄の関係を作っていく。こうした方向にシフトしていく必要があるではないかと思います。

その点に関して言えば、旧統一教会は遅れているじゃないかと思いますし、宗教界全体としては、長寿社会のニーズへの適応が遅れているから、いま急速に衰退しているのだと思います。今後は、長寿高齢化社会に貢献する運営形態に変えていかないといけないと思います。

230211_jyouyuufumihiro_2

「統一教会は、ほっといても、そのうち消えることになる」

鈴木:変えていけるんでしょうか?

上祐:そうなんですよね。宗教というのは、昔からのやり方を変えるのが、大変な組織です。統一教会も、故・文鮮明開祖の教えから転換するのは容易ではないと思います。

しかし、変えていかなければ、統一教会は、ほっといても、そのうち消えることになると思います。統一教会のようなキリスト教系は、外部社会からの批判・攻撃は弾圧と受け止めるなどして強い面があります。しかし、内側からの崩壊はどうしようもない。だから、今後の社会の人々のニーズを満たさないと続かないのは宗教も例外ではない。鈴木さんがおっしゃる通り、宗教も、客観的には、資本主義市場経済の中の一つの業種ですから。

統一教会は、昔50〜60万人の信者がいると言っていました、今は公称で10万人と言っていますが、宗教学者の島田裕巳氏の調査では、2万数千人じゃないかと。今回の件で、解散反対の署名運動では、署名した信者は2万4,000人前後。名前を出してない人もいるだろうから全部では5万人弱としても、全盛期の10分の1に急速に減少してきたわけです。

こうした中で、山上容疑者の事件は、一つの運命だったのかもしれませんが、ほっといても衰退するのに、そこに泣きっ面に蜂というか、長寿化に、新型コロナに、今回の統一教会批判がおきました。だから、後は、どう改革するかですよね。宗教と言っても、資本主義の中で、消費者のニーズに合わせられなければ、どうしようもないのではないでしょうか。

Next: 第二の麻原は生まれるか?社会に不満を持つ若者たちは多い…

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー