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高配当株「JT」の高配当は今後も続くか?老後資金の柱にするリスクと3つの落とし穴=佐々木悠

リスクはないか

JTに投資する際の3つのリスクを考えます。

  1. たばこ規制 
  2. のれん
  3. ロシア

<たばこ規制>

日本では今のところ大きな問題はないように感じます。有価証券報告書にも政府との対話を行いながら合理的な事が記載されていますから、現在はさほど大きなリスクには感じません(そもそも政府はJTの大株主であり、JTからの配当やたばこ税は貴重な収入源となっています)。

しかし、諸外国ではそうはいきません。海外に目を向けると不正製造たばこが問題になっています。世論の風当たりの強さもあり、JTが進出している北米やヨーロッパ、各新興国で規制が強化された場合はJTにとって大きなリスクとなります。

<のれん>

のれんとは、M&Aにおいて買収された企業の時価純資産価額と実際の買収価額の差のことです。この差額であるのれんは資産として認識されます。JTは数多くのM&Aを行っていますから、22年3月期第三四半期決算によると資産の約40%がのれんで占められています。

JTが採用しているIFRSでは買収した事業が計画通りに進まなかった場合、のれんを一気に償却する必要があります。この場合減損損失が発生し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方でこの償却は直接キャッシュフローに影響する訳ではありません。直接的な配当への影響は少ないと考えます。

<ロシア>

2023年2月現在、最も注意すべきリスクはロシアとJTの関係性です。

ロシア市場は売上の10%、調整後営業利益の21%を占めます。ロシア国内での市場シェアは36.8%と非常に有効な市場です。

一時は事業売却報道もありましたが現在は「制裁措置遵守しながら、事業を継続」する方針です。ひとまずは落ち着きましたが今後もロシアの動向は目が離せません。

もし仮にロシア情勢が悪化し、事業撤退が実現した場合は業績に悪影響を与えます。

調整後営業利益の21%が消失する訳ですから、配当性向を一定にするなら20%前後の減配が想定されます。

配当は継続するか?

ここまでをまとめます。

  • 独自のM&Aプロセスを活かして成長してきた
  • 海外では新興国で需要が上昇傾向。総合的に需要減少も業績は安定
  • 日本のたばこ需要は下落傾向だが、単価の上昇などが作用し売上は持ち堪えている
  • 現状、最大のリスクはロシア情勢

ここからは私の意見ですが、たばこへの需要減退やロシアリスクはあるものの、JTの業績は今後も安定して推移することを想定します。何より、たばこは各国において寡占事業であり、大きな投資も不要であることからキャッシュフローが安定します。したがって、配当の継続性は高いと考えて良いでしょう。

しかしながら、リスクがまったくないわけでもありません。確かに言えるのは、有望なM&Aの投資先がない限り、ここから大きく成長するわけではないということです。したがって、長期的なキャピタルゲインを望む銘柄ではないことは確かですし、ロシア等のリスクを考えると、ここだけに投資することは安心感を欠きます。

もし万が一が起きた時のリスクに備えるため、高配当株を買うにしても、1銘柄ではなく複数の銘柄に分散することを私からはおすすめします。

今後、高配当銘柄の分析を公開します。それらと組み合わせながらポートフォリオを考えましょう。


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image by:IgorGolovniov / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2023年02月14日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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