そもそも本当に食べて大丈夫か?
たいがいの昆虫は人が栽培している穀物のお裾分けで生きているケースが多く、よくよく研究してみたら結局は穀物を栽培しないと昆虫が育たないという話も出てきそうで、それなら今まで通り穀物を栽培するほうが適切という判断も働きかねない状況です。
食品として摂取した場合にアレルギーなど健康に与える影響をチェックすることも絶対必要で、この部分の研究が進んでいない点も大きく危惧されるものがあります。
そこいらにいる便所コオロギを捕まえてきてぶっ叩いて粉にしてご飯にかけて召し上がれのような拙速な対応はできないものだということを、多くの人々が知る必要を感じされられます。
食物としてのデファクトスタンダートになるには相当な時間がかかる
たとえ上記のようなプロセスをすべてクリアして食物として提供されることになったとしても、本当に人々が好んで食べるようになるのか、つまりデファクトスタンダードとして機能し始めるのかには相応の時間が必要となるのは言うまでもありません。
このかなりセンシティブな問題をどう解決していくかについても、相当な思案が必要になりそうです。
食物をめぐる本邦の対応を俯瞰してみますと、食料の自給率を高めるという努力は完全に放棄されていますし、今も足元で大量に発生しているフードロスを解消することもできないままにコオロギの話だけが前のめりに登場するのは相当パラドキシカルなもの。
食物供給という視点では、まず昆虫に着目するより、既存のプロセスの改善を精一杯やってみてからではないとこの手の話は進まないことを感じる次第です。
直近の話題では、牛乳が生産過剰に陥っており、乳牛を殺すことが国の喫緊の課題となっているのは流石に飽きれてものが言えない状況です。
生産された牛乳をいかに食品として活かすかを誰も考えないまま、その一方でコオロギの食用を考えるというのは誰が見てもまともな発想とは言えません。