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なぜ既得権益でウハウハの地方議員に「なり手不足」が起きるのか。年間稼働40日・議会は毎回1時間程度の“怠け者天国”が維持される闇=神樹兵輔

4分の1が無投票当選。自公を支える都道府県議

もう一つの「なり手不足」の問題は、人口の多い大規模自治体における「無投票当選」という現象を、多く発生させていることです。こちらは人口も多い大規模自治体の問題なのです。

2023年3月5日付の朝日新聞では「都道府県議4分の1が無投票」という衝撃的な記事が掲載されました。

これによると、47都道府県の直近の選挙では、定数の4分の1が、無投票で議員が決まっていたというのです。

有権者数でみると、全体の2割超で、約2,400万人が投票の機会を失われたと報じています。

ですが、選挙の投票率そのものが、大体有権者数のせいぜい半分ですから、実際に投票機会を失ったのは、2,400万人の半分の1,200万人というべきが、実態に近い数字でしょう。

日本国では、地方選挙のみならず、国政選挙においても、有権者の半分ぐらいしか、投票に行かないからです。

これは本当に由々しき問題でしょう。

これではいつでも、組織票に強い、政権与党の自民・公明が多数派を形成するようになってしまうからです。

自公にいいように政策が委ねられ、とりわけ国政では政治献金が集中する自民党が主導して、大企業や富裕層を優遇する政策が採られ、日本人全体がみんな貧乏になってきていることからも、問題は明らかでしょう。

その国会議員の地元基盤になっているのも、自民党の地方議員たちなのです。

自民党の国政における政策は、これまでも酷いものが数々並びます。

主だったものだけでも、「消費税」の導入とその税率アップ、法人税率・所得税率の金持ち優遇税制への移行、奴隷労働を拡大させた「外国人技能実習生制度」の導入、中間搾取合法化で労働者差別を助長する「労働者派遣制度」の拡充、アメリカの言いなりでGDP2%枠(2027年度11兆円)へ向けての軍事費倍増と、さらなる増税見込み、老朽化原発再稼働と新増設……などなど。主だったものだけでも、悲惨の一語に尽きます。

日本社会を壊し、国民の格差を広げ、国民の貧困窮乏化政策で、大企業・富裕層にのみ報いてきたのが、自民党の政策だったからです。

有権者の9割以上が投票するようになれば、必ずや国民の多様な意見が反映され、今よりも、もっと豊かな政治・行政が取り戻せるはずなのです。

自民党と競合する健全野党を育てなければなりません。

これからは、必ず投票には行くようにしましょう。

正しい民意を政治・行政に反映させるべきだからです。自民党にすり寄り、なびく、自民もどきの野党など要らないからです。

都道府県議選の自民党1人区の当選状況は68.1%

さて、なぜ人口の多い自治体である都道府県議会においても、他の小規模自治体議会のように、立候補者が少なく、「無投票当選」という現象が起こってしまっているのでしょうか。

もちろん、定数を超える立候補者がいなかったからに他なりませんが、なぜ2,000万円超の高額報酬が得られる都道府県議会議員に立候補する人が少ないのでしょうか。

一見表面的に見ると、これも「議員の仕事が大変だから、立候補者が少ない」という現象に映りますが、そうではないのです。

地方議員の仕事は、前述した通り、非常にラクチンだからです。

年間の議会の開催日数も少なく、数年ごとにアゴアシ付の海外慰安旅行ならぬ、海外視察旅行まであるのですから。

これは、国政の衆議院議員選挙の小選挙区(1人だけ当選)における死票(無駄になる投票数)が多くなる仕組みとも通底している問題です。

それは、都道府県議会の選挙区における「1人区」の問題なのです。1人しか当選できないと、死票が多く出ます。

すなわち、選挙区の投票数の半数の票さえ得ていなくても、その地区の代表者として、1人だけが当選できてしまうというカラクリにあるのです。

都道府県議選では、1人区、2人区、3人区、4人区、5人区などの選挙区の定数ケースがよく見受けられますが、鹿児島県の鹿児島市、及び鹿児島郡区の選挙区では、17人区もあり、石川県の中心部の金沢市の場合には、16人区まであります。

このような複数定数区のほうが、民意は反映されやすいでしょう。

こうした選挙区定数が、1人区の場合には、どうしても現職や自民党所属議員が有利になるということで、「どうせ当選できないから」と、他の立候補者が出なくなり、投票が行われずに無投票当選が決まってしまうカラクリが働いてしまうのです。

2019年の前回の統一地方選挙では、1人区での自民党が圧倒的に強かったのです(公認の他に推薦・支持も含む)。

都道府県議選における自民党の当選状況は、全国の1人区で68.9%も占めているのです。

衆議院の小選挙区制には、死票を減らすための比例代表制もありますが、地方議会では1人区でいったん当選してしまうと、多選が可能となるのです。

組織票の強い自民党がずっと勝ち続けられるのです。1人区では、死票が多く、民意が反映されにくくなるからです。

そのため、立候補しようとする他党候補者がいなくなり、無投票当選が毎回増える構図ともなっています。

人口の少ない小規模自治体の議会での「議員のなり手がいない」といった事情とは、少々異なるのです。

Next: 解決するには議員定数の大幅削減しかない

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