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“非減配”株の武田薬品工業は買い?巨額の借金を抱えながら配当を維持できるか?製薬会社のリスクと魅力を分析=佐々木悠

武田に投資するリスクと魅力

以上を踏まえて武田薬品工業に投資するリスクと魅力を考えます。

ここまで説明した通り、最大のリスクは財務リスクです。

有利子負債の負担が重く、利益を圧迫している事実は認識すべきでしょう。

そして企業買収によって多大なのれんも抱えています。2022年3月の決算では、資産の約33%がのれんで構成されています。武田が採用している会計基準はIFRSですから、毎年の償却はありませんが、もし買収先企業の収益性が悪化した場合、減損処理が行われ、急激に財務状況が悪くなる可能性もあります。

そして、もう1つが特許切れのリスクです。特許が切れると、他社が同じ製品を製造して販売できるようになり、市場には競合他社が参入する可能性があります。これにより、既存の製品の売り上げや利益が減少することがあります。

武田の場合はエンティビオの特許切れが26年5月、タケキャブが2031年8月です。エンティビオの特許切れが近いですがクリストフ・ウェバー社長は32年以前の新規参入の可能性は低い、という見解を示しています。その理由は製剤、用法用量、製造法など、エンティビオのさまざまな側面にかかる特許を取得しており、それらの特許は米国において2032年に満了する予定です。2032年以前に販売を試みる後発医薬品は、全ての関連特許の侵害の可能性、もしくはそれら特許の法的な有効性の確認が必要であるため、とされています。

これらの状況を踏まえ2030年までに次なる主力薬品を作れるかが勝負所だと考えます。

そして投資の魅力は配当金です。シャイアー社を買収しても、コロナのリスクが高まった時も、10年にわたって1株あたり180円の配当金を維持しています。

しかし配当性向は高くなっています。2022年の配当性向は122%であり、過去10年のうち6度、100%を超えています。合理的に考えると企業としては株主還元よりも財務を立て直す方が優先順位が高いでしょう。

しかし、配当政策では年間配当180円の確立された配当方針を維持する方針ですから信じてみるのも良いと思います。

武田は、これら財務リスクと配当の懸念をカバーするために本業をしっかりと行っており、23年2月に今期業績予想を上方修正するなど、目先の業績は好調です。

現在、武田薬品の主力製品であるエンティビオとタケキャブの特許切れのタイミングは2030年頃であり、それまでの間は、収益を持続的に上げることができる見通しがあると考えられます。社長のインタビューにもあるように主力医薬品に自信を持っているため、武田薬品は2030年までに売上収益5兆円を達成できると予想されています。(23年3月期の収益予想は約4兆円)

今後数年にわたり返済を続け、既存に変わる新薬開発やM&Aを継続すればその先の成長も期待できるのではないでしょうか?


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image by: Michael Vi / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2023年3月17日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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