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個人投資家に大人気「オリックス」株は買いか?配当は今後も続く?長期投資家が知るべきリスク=佐々木悠

オリックスの評価は難解を極める

オリックスはその他金融リース企業と分類されますが、今後は投資事業に注力する、という方向性が見えてきました。それを踏まえてリスクを考えます。

まずは金融市場の混乱リスクです。目先、アメリカの銀行が破綻した事によって、株価は16%下落しました。またリーマンショックで株価は7分の1まで下落しました。短期的な視点ですが、現在は金融市場の混乱の最中にある銘柄ですから注意が必要です。

そして、コングロマリットディスカウントの問題も無視できません。

コングロマリットディスカウントとは、複数の業種や事業を持つコングロマリット企業の株式が、市場平均より安く売られている状況を指します。(オリックスの過去10年の平均PBRは約0.7倍。同PERの平均は約10倍)一般的に、コングロマリット企業は事業の多角化によってリスク分散を図ることができますが、投資家はその事業ポートフォリオの複雑さや規模の大きさによる企業価値の評価難易度から、投資のリスクを高く見積もり、株価を下げることがあります。

要するに企業分析が難しく市場で評価されないため株価が低く見積もられやすい、という状況です。

この状況は毎年の業績変動要因を分析することにより明確になります。

年度 前期比業績 業績変動要因
2019 減収減益 不動産収入の減少
2020 減収減益 生保関連手数料収入が減少
2021 増収減益 運用益と手数料収入増加、有価証券の売却など
2022 増収増益 リース、不動産、有価証券の売却など

上の表を見ただけでは、何の会社の業績報告か分からず、また、様々な要因で業績が変動するため、企業の掴みどころがないと感じます。

そして最大のリスクは投資先や事業の投資回収の不確実性、と考えます。

有価証券報告書の事業等のリスクにおいて、「金融サービスと大きく異なる企業を買収、投資するケースがある。この事業が失敗すると大きな損失、将来の機会損失、当初想定した価格や時価で売却できない可能性がある」と記されています。

今後の成長ドライバーは海外の事業投資にあるため、失敗した場合の業績に与える影響は大きくなる可能性があります。

オリックスの配当は継続するのか?

以上を踏まえて、オリックスへの投資魅力を考えてみましょう。

最大の魅力は、積極的な株主還元です。株主優待は2024年3月31日に廃止されますが、現在の方針では25年まで配当金を減らさずに維持することを目指しています。ただし、あくまで25年まで、という期限付きであるため、それ以降この方針を変更する可能性もあります。

また、オリックスの業績を左右する重要なポイントとして、海外の投資事業が挙げられます。ただし、この方針は収益の上下動リスクがあると言えます。

現在、金融機関の破綻リスクが強まっている流れを受けて、目先の株価は下落傾向にありますが、2023年3月現在のPERは約10倍と、過去10年間の平均水準に近い状況です。したがって、必ずしも割安感があるとは言えないかもしれません。

オリックス<8591> 日足(SBI証券提供)

オリックス<8591> 日足(SBI証券提供)

オリックスは業績は概ね右肩上がりであり、株主に積極的な配当政策をとっています。また、海外の投資事業の成長が将来的な収益増加につながる可能性があります。一方で、多角化企業であるため本質的な強みが明白でなく、評価しづらい企業でもあるため大きくベットするには心もとない印象です。

また、金融市場の混乱や投資先・事業の投資回収の不確実性など、リスクについては十分に認識する必要があると考えます。短期的な視点では、インフレや金融機関の破綻が金融市場の混乱を引き起こす可能性があります。また、オリックスの投資基準である5〜7年という長期的な視点においては、都度海外事業の投資成果を見極める必要があるでしょう。


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image by: Mirko Kuzmanovic / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2023年3月23日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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