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「日立」復活は日本経済の“再起”に繋がる偉業。海外からも日本企業の再生モデルとして評価。近づく名目GDP600兆円=勝又壽良

今後高まる賃上げ圧力

コーポレート・ガバナンスには、ステークホルダー(利害関係者:株主・従業員・取引先・債権者)との協同関係強化が含まれる。単純に株主利益を図ることだけが目的でない。企業発展に欠かせないのが、従業員の利益擁護=生産性に見合う賃上げである。

経団連が8月に発表した大企業の春闘の回答・妥結状況(最終集計)は、定期昇給と賃上げ率が3.99%だった。1992年以来の高水準である。翌年以降への継続と中小企業への波及が今後の焦点となるが、高い賃上げをしなければ、労働力確保が難しい環境になっている。高い賃上げは、企業存続の前提条件になったのだ。

高い賃上げ実現の前提には、コストアップ分の一部を価格転嫁する合意が必要である。コストアップ分は、合理化投資によって吸収するのが当然である。

だが、コストアップ抑制を理由にして賃上げにしわ寄せさせないことだ。これまでは堂々と、コストアップ分を賃上げ抑制でカバーする「労働者踏みつけ」を行ってきた。これが、総需要を抑えて低い名目GDPの伸びに終わらせてきた理由だ。蛸が、自分の足を食うに等しい愚行であった。

日本企業は現在、この慣行が間違いであることを認めて方向転換した。今年の賃上げには、これが反映されていると見るべきだろう。となると、今回が一過性の高い賃上げで終わるはずはない。現に、労働力人口が減少に向っている以上、賃上げ抑制論は全く説得力を持たないのだ。

日本企業の意識改革は、確実に進んでいる。日本政策投資銀行(旧日本開発銀行)が8月発表した2023年度の企業の設備投資計画調査(土地購入を含まない)によると、全産業の国内の設備投資計画は22年度の実績比で21%も増加する。伸び率としては、1980年代以降で2022年度、2018年度に次ぐ3番目に高い伸びとなった。資本金10億円以上の企業が調査対象で、大企業2,915社のうち6割から回答を得た。

この調査では、国内の生産拠点を強化する動きが目立つ。製造業が国内供給能力強化する項目では、今後3年程度で「強化」が51%と21年度比10ポイントも上昇した。12年度の調査開始以降で最高になったのは、米中対立に伴う地政学的なリスクを認識している結果だ。

つまり、日本の製造業は海外投資よりも国内生産能力拡充に向っている。この傾向は今後、一段と強まるであろう。これは、国内の賃上げ圧力を高めるはずだ。

これまで40年近く、日本産業の空洞化が指摘され続けてきた。今、地政学的なリスクの浮上によって、この空洞化現象に逆流が始まろうとしている。大きな転換点にさしかかっていることは間違いない。

私は、経済記者として空洞化の進む日本産業の実態を眺めていたが現在、明らかに「逆流」が始まろうとしている。日本経済の再起に繋がるのだ。

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