NTTドコモは10月4日、マネックスグループと共同出資会社ドコモマネックスホールディングスを設立し、証券業に参入することを発表した。これがネット金融業界の再編のきっかけとなるかもしれない。大手携帯キャリア各社は金融事業を強化したい思惑を持っており、キャッシュも豊富に有しているため、今後も金融事業のM&Aを実施する可能性はかなりある。(『 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 』澤田聖陽)
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2023年10月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。
ついにドコモも金融サービス事業に本腰
NTTドコモは10月4日、マネックスグループと共同出資会社ドコモマネックスホールディングスを設立し、証券業に参入することを発表した。
マネックス証券は共同出資会社の100%子会社となる。
共同出資会社へのドコモの出資額は500億円。持ち株比率は、マネックスGが50.95%、ドコモが49.05%だが、ドコモが取締役の過半数を指名する権利を有するため、会社法や会計基準で定める実質支配基準でドコモの連結子会社となる。
ドコモは大手携帯キャリアでは金融サービス事業への進出が遅れていたのだが、マネックス証券を傘下に入れることで、ドコモが展開するポイントサーボスである「dポイント」や決済サービス「d払い」、電子マネー「iD」などと連携することで、顧客層の拡大を図っていくだろう。
なぜマネックス証券はドコモの傘下に入ったのか
マネックス証券はネット証券のなかで苦しい立場に置かれていた。
ネット証券では口座数を見ると、SBI証券が約1,000万口座、楽天証券が約900万口座と2社が飛び抜けている。一方、マネックス証券は約220万口座と、業界3位ながら上位2社に大きく水をあけられている状況だ。
またSBI証券と楽天証券が「株式手数料の完全無料化」に踏み切ったのも、マネックス証券がドコモとの提携を急いだ要因だろう。
マネックスグループの松本会長は決算発表会でSBI証券や楽天証券の手数料完全無料化について、「無理がある」「業界全体で当たり前になることはない」と否定的な見解を示していた。
これは逆に言うと、SBI証券や楽天証券ほどの株式売買仲介のシェアがないマネックス証券は、株式売買手数料を完全無料化したらやっていけないということである。
株式売買手数料を完全無料化すると、株式売買仲介関連の主な収益は信用取引の金利となるが、SBI証券や楽天証券と比べて信用取引の建玉も少ないマネックス証券は手数料を無料化にすることは不可能ということである。
しかし株式売買仲介については手数料無料を打ち出した2社により多くの個人投資家が流れるようになるだろう。
マネックス証券としては、株式売買仲介以外の収益を早急に拡大しなければいけない状況に追い込まれていたわけだが、自社単独では限界があり、約8,800万人のユーザーを持つドコモとの子会社化は最も魅力的な選択肢であったわけである。