fbpx

なぜドコモはマネックス証券を子会社化したのか。au・ソフトバンクを巻き込んだネット金融“大再編”が起こる可能性=澤田聖陽

ネット証券は株式売買シェアから経済圏競争の時代へ

ご存じのとおり、ネット証券は株式手数料自由化以降に格安手数料を売り物にして個人投資家の株式売買のシェアを伸ばしてきて、すでに個人投資家の80%以上がネット証券経由の取引となっている。

株式売買仲介については、すでにSBI証券や楽天証券のように手数料無料となっているところもあり、今後はこれ以上この分野で収益を伸ばすのは難しいだろう。

それでは今後ネット証券にとって「格安手数料」に代わり得る成長モデルは何だろうか?

グループとして証券以外の銀行、生命保険、決済事業などの金融事業・非金融事業とも連携して「経済圏」を構築して、顧客基盤を拡大して成長するというのが、その答えではないかと考える。

この経済圏モデルで一番先行しているのは「楽天グループ」だろう。

「楽天経済圏」という言葉はかなり浸透しており、楽天カードと楽天ポイントを中心として、銀行、証券、保険、イー・コマースなどと連携して事業規模を拡大している。

楽天証券については、楽天ポイントを使った投資などによって投資初心者を取り込んでおり、直近のネット証券の新規口座開設では圧倒的な伸び率となっている。

SBI証券についても、資本提携している三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の子会社である三井住友カード株式会社のVポイントを使った経済圏を構築しようとしている(SBI証券についてはVポイント以外にも対応しているが、Vポイントが圧倒的に有利な条件となっている)。

まだ規模は楽天経済圏ほどではないが、「SBI経済圏」もグループ内に銀行、生命保険などがあり、またSMFGがグループで力を入れている総合金融アプリ「Olive」でVポイントを利用できる点などが受けており、直近では楽天経済圏の負けないぐらいの勢いがある。

マネックス証券は2社に比べると、経済圏を構築できるような仕組みがなかった。

しかし今回、ドコモの子会社となり、今後はdポイントを軸とするドコモ経済圏に入ることで、SBI証券と楽天証券の2社に対抗できるスタートラインに立ったということになる。

今後も携帯キャリア主導のネット金融の再編があり得る

今回、ドコモはマネックス証券を連結子会社としたが、大手携帯キャリア各社は金融事業を強化したい思惑を持っており、キャッシュも豊富に有しているため、今後も金融事業のM&Aを実施する可能性はかなりある。

大手携帯キャリア各社の金融事業の現状を分析してみると、以下のとおりとなっている。

<ドコモ>

今回マネックス証券を傘下に入れたが、ドコモグループには銀行、生命保険などがない。この部分は後述のKDDIやソフトバンクグループと比べてかなり弱い。

<KDDI>

KDDIはグループにauフィナンシャルホールディングスを有し、同社の傘下にはauじぶん銀行、auカブコム証券、au損害保険がある。

KDDIグループ(auグループ)の金融事業の特徴は、金融事業会社との合弁事業が多いという点である。

auじぶん銀行株式会社は三菱UFJ銀行、auカブコム証券は三菱UFJ証券ホールディングス、au損害保険はあいおいニッセイ同和損害保険との合弁会社である(auカブコム証券だけ49%の持ち株比率でマイノリティシェアとなっている)。

その他上場しているライフネット生命にもマイナリティ出資している。

Next: ソフトバンクも買収に動く?ネット証券業界に地殻変動の兆候

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー