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日本企業の技術力を世界が再評価。米機関投資家も中国を見限り日本に資金を集めている=勝又壽良

日本の時代がやってくる

日本は、既述の通り「川上」から「川下」までの一貫生産体制を構築している。これは、世界に例のない日本企業の強みだ。21世紀の技術とされる「量子コンピューター」でも部品は日米でほぼ賄えるという。この分野では、IBMが先駆的な存在である。

IBMが、「2ナノ以下」の半導体生産に拘るのは、日米が「量子コンピューター」で世界覇権を握る構想に基づいている。その時期は、2035年ごろと推測されている。あと10余年で、日米企業が「量子コンピューター」で世界を席巻する構図を想像しただけで、「日本企業再起」というイメージを明確に描けよう。日本の国内経済もこれに応じて、後述のように変革されているはずだ。

以上のような技術のほかに、日本発では全固体電池や水素燃料エネルギーという新エネルギー技術が登場する。すでに、トヨタが開発で先鞭をつけている。全固体電池は、現在のリチウム電池と比べて、発火しない・走行距離が1,000キロ・充電時間は短いなどの特色を持つ。2027年にEV(電気自動車)へ搭載する。世界初だ。究極の自然エネルギーは、水素燃料ネルギーである。トヨタは、2030年に商用車に搭載するほか、燃料電池システムとしても発売する。

日本の技術は、これから矢継ぎ早に世界へ登場する。日本の時代だ。

中国リスクが日本再評価

米国の機関投資家は、これまで中国企業の発展に賭けてきた。年金投資も大量な資金が、中国市場へ流れ込んでいた。そこへ、中国の台湾侵攻リスクが急浮上して、これが大きな障害物となっている。

ロシアのウクライナ侵攻によって、ロシアへ進出した西側企業は大きな損失をこうむった。米エール大経営大学院のリストによると、23年6月時点でロシア事業の撤退や停止・縮小を決めたグローバル企業は、1,100社を超えているという。

このロシアのケースから想定されるのは、中国が台湾へ侵攻した場合、中国へ進出している西側企業は、ロシアの場合と同様に莫大な損害を受けるというリスクだ。これだけでない、中国株式へ投資した機関投資家は、回復不可能なほどの損害を受けるであろう。

機関投資家が最も忌避することは、市場の状況が不透明であることだ。これでは、対策を取りようがないことを意味する。習近平氏は、突然の政策転換を行うだけに、機関投資家はお手上げである。となれば、これほど危険極まりない中国市場から脱出することが最大のリスク対策になる。こういう、ごく平凡な結論になった。

ここで、機関投資家が着目したのは日本企業である。

「アベノミクス」から10年、内向きであった日本企業のビヘイビアを開放的にさせる「コーポレートガバナンス」(企業統治)が、ようやく軌道に乗ってきた事実に注目した。日本企業の技術力は折り紙つきである。その収益が、いたずらに内部留保される「悪弊」が改まりつつあることを評価し始めたのだ。

具体的に言えば、これから内部留保した資金を使って国内で「M&A」(合併・買収)を始めたことである。従来の日本的流儀では、他社の製造部門を買収することは「ノンモラル」として退けられてきた。だが年々、減少する労働力人口の中で不採算部門を抱えていくことが不可能になっている。得意分野へ人的資源を集約する必要性が高まってきた。これが、日本企業の生産性をいやが上にも高めるのだ。国内で今後、M&A必至論の背景になっている。

Next: 変わり始めた日本企業。経済発展のカギはZ世代と女性

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