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1ドル170円までは軽く進む?「日本は円安を望んでいる」と海外エコノミストたちが判断している理由=高島康司

海外のエコノミストの見方は「日本は円安を歓迎」

だが、海外のエコノミストは別の見方をしている。「日銀」は景気の失速を恐れ、金利を引き上げられなかったとは実は見ていない。日本政府、そして「日銀」は、円安を是正するどころか、明らかに円安を望んでいるというのだ。

これは多くの海外のエコノミストが主張しているが、その代表的な一人はウィリアム・ペセックである。彼は「ブルームバーグ」や「フォーブス」を始め多くの経済専門紙の記者として活躍し、現在は「アジア・タイムス」の主筆になっている人物だ。

ペセックによると、為替トレーダーは、「日銀」が円安を食い止めるために積極的に介入していると思い込んでいるようだが、実際は、「日銀」は世界の市場に対してその場しのぎのウインクをしているに過ぎないという。もし日本政府と「日銀」が、円安の是正に本腰を入れるのであれば、鈴木財務相は早くから何度もマイクを握り、世界に向って円安が好ましくなく、大胆な為替介入の実施をアナウンスしているはずだ。ワシントン、ベルリン、ロンドン、オタワ、パリ、ローマの政府高官と電話をつなぎ、G7でコンセンサスを取り、大規模な為替介入の条件を整え
ていたはずだとしている。

しかし今回、財務省は為替介入の事実を公表せず、隠密理に実施している。また、G7との連携をする動きもまったく見せなかった。

このように、「日銀」も財務省も円安の是正に消極的な理由は、日本は円安の恩恵に気づいているからだという。3月の海外出荷額は4ヶ月連続で増加した。3月の前年同月比7.3%増は、2月の7.8%増に続くものだった。混迷を深める2024年の第2四半期時点で、世界第4位の経済大国である日本にとって、円安は間違いなく最高の好材料だという。

しかし、株価は上昇しているものの、日本の実体経済は明らかに低迷している。やっと2期連続のマイナス成長が回避されたものの、不況下のドイツに抜かれ、日本は世界第4位になった。「IMF」は、2025年に日本はインドに抜かれ、世界第5位になるだろうと予想している。

また日本では、実質賃金の低下が続き、個人消費はあいかわらず低迷している。さらに、半導体などの最先端技術に力を入れているものの、日本の最先端産業が成長をけん引する状態にはない。このような状況では、やはり、輸出やインバウンド需要の増大をもたらす円安のプラスの効果に期待せざるを得ない。

このため、「日銀」も財務省も、特に国内向けのパーフォーマンスとして為替介入しながらも、実際は円安状態に期待しているというのだ。これが、ウィリアム・ペセックを始め、海外のエコノミストの記事に多い見方だ。

海外のエコノミストのこのような見方が、金融市場の見方を反映しているとするなら、日本は円安容認なので、さらに円が安くなる可能性が高いだろう。

では、これからどの程度まで円安が進むのだろうか?

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