米銀行が抱える爆弾
債券の問題と不動産の問題が重なってくるのがアメリカの銀行です。
既に債券価格の下落の問題でシリコンバレー銀行などが実質的に破綻し、この時は国の介入などで事態を納めましたが、このリスクはまだ眠っていると思います。
農林中金は満期保有の債券を売って実現損にしましたが、アメリカの銀行でも同じような状況になってきているのではないかと思われます。
満期保有と売買目的ががありますが、満期保有にしておけば実現損にはならないものを、何らかの理由で売らなければならなくなった時にその損失が日のもとに晒される可能性があるということは認識しておくべきでしょう。
図の青の部分が売買目的の債券の含み損で、オレンジの部分が満期保有の債券の表に出ていない損失です。
これがかなり膨らんでいるということです。

米国債10年 週足(SBI証券提供)
アメリカの金利は2023年の半ばから落ち着いてはきましたが、インフレの加速もあり、最近ではまた上昇傾向にあります。
金利が上がれば上がるほど債券の損失が大きくなってきます。
アメリカの地銀は不動産にかなり貸し込んでいるので、債券価格の下落の問題と不動産の問題はどこかで露見するだろうと私は思っています。
問題は、いつ、どのくらいの規模で訪れるかということになります。
長期投資の原則
こういった金融危機・信用危機というものはどこかで必ず起こります。しかし、いつどこで起こるかは全く分かりません。また、世の中全体では長期的に見れば成長しています。
成長しているものに関しては、常にリスクを抱えている中で、どこかのタイミングで投資しなければならないということです。
したがって、今下手に資金を引き上げるということにも必ずしも賛同できません。
ではどうするかというと、まずは「君子危うきに近づかず」だと思います。
一部では好調かもしれませんが、今銀行や不動産といったところにはあえて手を出す必要はないと考えています。
メガバンクは決算は好調で、債券の影響も小さいと先述しましたが、信用危機には様々なものが関連しあっているので、何かしらの流れ弾をくらう可能性も十分にあると思っています。
少なくとも株価に関してはその状況では下がりやすいので、あえて今そこに投資することはないと感じています。
そして、あとは長期投資の原則に従って、割高なものに手を出さない、長期的に伸びていくと思えるものを早い段階で買っておく、ということになると思います。
良い銘柄は、一時的に下がることはあってもすぐに回復して伸びていきまし、「○○ショック」の下落も大した問題にならなかったりします。
いま買った価格よりも、ショックで下がった時の価格の方が結果的に高かったというケースもあります。
本当に良い企業だと思ったら躊躇せずに買うべきだということです。
あとは下がった時にどうするかを考えておくことで、まずは売らないということと、できれば下がれば下がるほどたくさん買うということです。
とにかく、良い企業・良い銘柄を買うということに尽きるでしょう。
過度に怯えることなく、一方で正しい認識を持ちながら投資を進めていくことが長期投資の王道です。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2024年6月4日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。