IP戦略で成長できるか
社長の夏野剛氏は、KADOKAWAを以下のように述べています。
我々として、出版社とは考えてなく、IPクリエーション企業と位置付けています。紙や電子で文章として書いていく物、(漫画を含め)がIPの源泉になることが多い。
この考えが根本にあり、KADOKAWAの2024年3月期から2028年3月期までの中期経営計画の大きなテーマはIP活用の最大化です。

出典:中期経営計画
KADOKAWAの代表的なIPとして、『Re:ゼロから始める異世界生活』、『ソードアート・オンライン』、そして『ELDEN RING』が挙げられます。
KADOKAWAのIPの強みとして、異世界もののIPが人気です。例えば『ELDEN RING』は、緻密に作り込まれた強力な世界観を持っているため、映像化、書籍化、漫画化など幅広いIP戦略が考えられます。
また、グローバル流通力の拡大というテーマもありますが、KADOKAWAの海外売上比率は20%と決して高くはありません。しかし2021年10月、中国のテンセントと資本業務提携を結び、特に中国市場でのグローバル展開を進めています。
こういった独自の世界観がKADOKAWAのIPの特徴であり、これが今後、日本と世界でどこまで受け入れられるか?が成長の大きな鍵になりそうです。
KADOKAWAに投資すべき?
最後にもう一度株価の推移を見てみましょう。

KADOKAWA<9468> 月足(SBI証券提供)
過去10年間の平均PERは30倍です。そして2024年6月19日現在のPERは29.9倍であり、過去平均と比べて大きく割安ではありません。
当然サイバー攻撃はマイナスの影響が大きいわけですが、プラス要素を考えるのであれば、オワコン化していたニコニコ動画が注目されるきっかけとなったとも言えます。ニコニコ動画全機能が使えない代わりに、2008年前後にヒットした過去動画をランダムに10本で視聴できるサービスを仮として公開しています。

出典:ニコニコ動画(Re:仮)
これがネット上で注目され、ニコニコ動画のサブスクサービス需要がやや戻る可能性も考えられます。
(とはいえ売上に占める比率はわずか10%ですから、あまり影響がない可能性も当然考えられます)
会社の経営戦略をもとにKADOKAWAを評価するのであれば、異世界もののIPに対する期待が挙げられます。まずはそこを評価できるかどうかが投資判断の軸の一つになるでしょう。