ターゲットは富裕層
中流階級と呼ばれる層が厚かった時代は、「百貨店」というと休日に家族で出かける所というイメージで、百貨店側もその中流階級をターゲットとして経営していました。
ところが、バブル崩壊以降は中流階級の人々にとって百貨店の商品は高価になってしまい、百貨店を訪れる人の数が少なくなってきました。
今、百貨店の主な顧客は富裕層ということになります。
しかし、バブル崩壊後から長い間、百貨店は明確に路線を変更することがなかなかできていませんでした。
そこについに手を入れたのが三越伊勢丹でした。
元々他の百貨店に比べて富裕層の顧客が多いと言われていますが、上客を大事にして利益率を上げ、従業員も減らして富裕層向けのサービスに集中させました。
また、百貨店にはお客さんのところに出向いたりして商品を提案する”外商”というサービスもあります。
売上の50%が5%の上顧客によるものというデータもあり、少数の富裕層を相手にする方が中流階級の多くの人々を相手にするよりも百貨店にとっては価値のあることだったと考えられます。
経営学者のドラッガーは、経営とは顧客が誰かということを定義することだと言いました。それが明確になっていないと適切なサービスを提供することができないということです。
百貨店はかつては中流層をターゲットにしていましたが、今の百貨店の顧客は富裕層であり、三越伊勢丹はそれに気づいてそれに対する戦略をはっきり打っています。
富裕層をターゲットにしても、日本の経済は縮小していて富裕層も減っていくのではないかと思うかもしれません。
しかし、日本の富裕層自体は実は増えているのです。
それを考えると、富裕層ビジネスは成長ビジネスだという風に捉えることができます。
もう一つの富裕層
さらに、今もう一つの富裕層が日本に新しく入ってきていて、それがインバウンドです。
以前は中国人観光客の”爆買い”が主でしたが、今は欧米からも多くの人が日本を訪れています。
欧米から日本に来るだけでもかなりお金がかかるので、日本に来ているという時点でそこそこのお金持ちだと考えられます。
直近では月別訪日外国人数が過去最高を更新し続けていて、おそらく2024年は年間でも過去最高を突破しそうということで、日本を訪れる外国人がますます増えると見られます。
そんな中、このインバウンドの人たちのニーズをつかみ、訪日の度に消費してもらえる形を作ることができればさらに安定して売上を伸ばすことができると思います。
実際に売上に占めるインバウンドの割合は15%くらいまで達しているということです。
百貨店全体にとって大きなボリュームを占めるようになっているわけです。
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