<ボラティリティが大きい可能性も>
また、必ずしも失敗とは言えないかもしれませんが、日々の変動(ボラティリティ)も大きくなってしまうのではないかと思われます。
そういうアップダウンに耐えられないような人はこのファンドには向いていないかもしれません。
しかし、そのリスクを差し置いてもそれ以上に井村氏の実績は素晴らしいものです。
<井村氏に依存している>
一方で、私が大きく懸念している点は、このファンドが販売面でも運用面でも井村氏1人の個人投資家時代の実績に依存していることが否めないところです。
これまで井村氏が1人で投資を行っている時は、同時に持つのは3~5銘柄程度だったように見受けられ、それに集中投資することで大きく利益を出せたところがあります。
しかし、今回ファンドとして運用するということで、リスクを抑えた形になっています。
20銘柄に投資するということで、投資信託で20銘柄というとかなり少ない方ではありますが、これまでより多くなるので、井村氏が1億円から100億円にしたような増え方は(常識的に考えたら)しないだろうと思われます。
今までだったら1銘柄を熱心に掘り続けていれば良かったのですが、分散してできるのかというところもあります。
<井村氏離脱のリスク>
また、今回は1人ではやらないということも気になるところではあります。
ロジカルな話ではなく人間性の話になりますが、これまでは1人でコツコツと熱を込めて、誰もついてこれないような事をやり続けてきましたが、複数人で行ったことは辞めてしまっている経緯があります。
それぞれがどういう理由で辞めたかは分かりませんが、トリオでやっていたお笑いも辞めていますし、「Zeppyチャンネル」というYouTubeチャンネルも3人でやっていたのですが辞めています。
今回は2人でやるということですが、複数人となると必ず意見の対立が起こりますし、井村氏は熱が入りすぎてしまう部分があるので、他の人がついてこれるかという懸念を個人的には感じています。
もし何か上手くいかなくなった時に井村氏が辞めてしまうことがある意味で最大のリスクだと思います。井村氏がいなくなったら、運用の内容もそうですし、ファンドを買う理由がなくなってしまいます。
「ハードワークがアルファの源泉」と謳っているのに、そのハードワークをする人がいなくなったらどうするのかということです。
<ファンドという形態のリスク>
一般的なファンドの難しい部分もあり、個人でやる分には自由にお金を動かせるので柔軟性が高いのですが、ファンドとなると他人のお金なので、払い出されることもあり、預けられた資金の中でやらなければならないわけです。
ボラティリティが大きい可能性があるということは先述しましたが、何らかのきっかけで大きく下がった時に、ファンドに預けていた人たちが一気に去っていく可能性もあります。
ファンドとしては本来持っておくべき銘柄があったとしても泣く泣く売らなければならなくなったり、下がった時に買いたいにもかかわらずむしろ売らなければならないということも起こり得ます。
これは多くの投資信託が抱える問題でもあり、そうなった時にこのファンドがどうするのかという問題もあります。
<規模のリスク>
ファンドの規模の問題もあります。
小さいうちは自分の売買で株価を上下させてしまうことはありませんが、規模が大きくなればなるほど株価に影響を与えてしまい、買おうとしたら高くなり、売ろうとしたら安くなる、ということになってしまいます。
それを担保するために、「アルファを獲得するための七つの問い」の6番目“流動性ディスカウントを考慮しているか”というものがあります。
ファンドの規模が大きくなったら買う企業のサイズも大きくしていく必要がありますが、大きな銘柄に果たしてアルファを見つけられるのかというところです。
実際に中小型株に投資しているファンドの多くが突き当たる問題で、小さな銘柄だと株価に影響を与えてしまうし、大きな銘柄だと旨みが少ないということになってしまいかねないです。
逆に、小さな銘柄に関しては、井村氏のファンドが買ったとなるとそれがアルファの源泉になってしまって、いわゆる「イナゴ」が集まってくることも考えられます。
買う時はそれでも良いかもしれませんが、売る時には一斉に売ることになり、値崩れを起こしてしまいます。
同時に損切りもしていかなければならず、多くのファンドが抱えるこの問題に井村ファンドも挑んでいくことになります。