高級車EVは電池をリース
トヨタは、高級車のEV電池についてリース方式を採用している。EV価格の2~3割が電池コストとされる。それだけに電池リースの採用は、ユーザーにとって初期費用を抑える効果がある。トヨタのEV「bZ4X」は、電池リース方式で次のような価格に設定されている。
FWDモデル:600万円
4WDモデル: 650万円
リース方式の採用は、前述のとおり消費者が初期費用を抑えつつ、電池のメンテナンスや交換の手間を軽減できるメリットがある。リース契約によって、ユーザーは電池劣化に対する不安も軽減されるのだ。
仮に、EV「bZ4X」が電池リース制を採用していなければ、EV価格は1,000万円前後になろう。それが、EV価格の2~3割を占める電池がリースの結果、600~650万円の価格帯へ引き下げられている。
世界のEV大手メーカーで、電池のリース方式を始めたのはトヨタだけである。他社がリースを実施できない理由は、売り切り方式にすれば、それだけ現金回収が早まり経営的に楽になるからだ。トヨタは、「市場をじっくり育て果実を大きくする」財務的余裕がある。24年3月期の現預金総額は、トヨタ単体で4兆2,781億円。売上41兆6,000億円に対して10.3%にも達した。営業利益率は11.9%と過去10年で最高を記録している。これだけの財務的ゆとりを持つ以上、EV電池リースは大きな負担にならないのであろう。
一方のBYDは、24年12月期の営業利益率は4.9%である。自動車メーカーにとっては危険ラインである。BYDは、収益の吃水線ギリギリのところで「乱売合戦」を繰り広げている格好だ。トヨタとは、財務基盤が「天と地」というほどの差がある。
トヨタの電池リースでは、電池容量が70%を下回った場合に保証を付けている。この保証期間が、10年間または走行距離20万kmまでとしている。EVは電池を含めて、生産時のCO2発生量が大きい点が「反環境的」存在である。その面では、HV(ハイブリッド車)がはるかにCO2発生量は少ないのである。
EVが、環境車の代表と言い切るには、できるだけ長い走行距離を実現することが前提になる。ドイツのVW(フォルクス・ワーゲン)の2019年の推計によれば、10万キロメートル以上の走行が必要とされる。EV「BZ4X」が、走行距離20万kmまで電池を保証しているのは、トヨタEVが真の「環境車」といえそうだ。
中国EVは、価格だけが唯一の競争条件になっている。中国電池の耐用年数は一般的に5~8年とされる。前記のVWの推計によれば、総二酸化炭素排出量を上回るに必要な10万Km以上の走行距離に満たないのだ。中国EVは、「環境破壊車」と言えないこともないであろう。
全固体電池で大きくリード
EV電池は現在、リチウムイオン電池が主流である。だが、発火事故が多いこと、走行距離が600Km程度であること、充電時間が数時間かかること、などの欠陥を抱えている。EVの自然発火事故が多発しており、一般駐車場への駐車禁止問題まで引き起こしている。
そこで、次世代電池として全固体電池の開発が急がれている。
トヨタが開発中の全固体電池は、リチウムイオン電池の性能をすべて上回っている。発火事故が少ないこと、走行距離が1,000Km以上であること、充電時間が10分以内であること。これらによって、ガソリン車並みの性能が期待されている。
トヨタの全固体電池のカギは電解質の量産化にある。これは、出光興産が担っており、全固体電池の実用化に向けた重要なステップを踏み出した。2027~28年にはトヨタで全固体電池EVが世界初登場となる。