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なぜ中国人の7割は所得税がかからないのか?庶民が「税金?何それ?」状態で暮らせるワケ=牧野武文

年収10万元以下で控除をしても課税所得が出てしまい納税をしている人が1.9億人もいますが、多くの人が税率3%の部分で所得税を払っていると思われます。これが納税者の98.2%を占めているのです。

年収10万元以下だと、控除をした後の課税所得は1万元か2万元程度でしょうから、2万元としても課税率は3%で、所得税の支払いは600元(約1万2,000円)ということになります。このような人は、所得税を支払ったことすら記憶に残らないかもしれません。交通違反の罰金や光熱費なみの額だからです。「所得税?それ何?」と反応する人は、所得税を支払っていることを忘れてしまっているのかもしれません。

所得が多い人はそれなりの額の所得税を支払っていますが、それでも納税者の人数は2億1570万人にしかなりません。労働者人口は7億7216万人なので、納税をしている人はそのうちの27.9%しかいません。7割以上の人が仕事をして稼いでも、所得税を支払っていないのです。

7割の人ですから、低所得者だけというわけではありません。感覚として平均的なサラリーマン以下の人はみな所得税を払っていません。払っているのは、企業の管理職以上の人、店舗のオーナー、経営者、SNSで大当たりをしたインフルエンサーなどです。

一般的な庶民は所得税を支払わず、高額所得者が所得税を支払い、国家の財政を支えています。なんとも羨ましい話ですが、これで国家財政は支えられるのでしょうか。中国政府はご存知のようにさまざまな分野に大規模な投資をしています。そのお金はどこからくるのでしょうか。

今回は、中国の国家予算がどこからきて、どのようなことに使われているのかについてご紹介をします。

税収で最も多いのは付加価値税(消費税)

税収が国家予算の基本になることはどこに国でも変わりありません。しかし、所得税については7割のもの人が払っていない中国で、中国政府はどのような税収をあげているのでしょうか。

税収で最も多いのは付加価値税です。中国では増値税と呼ばれていますが、基本構造は日本の消費税と同じです。2024年の付加価値税収入は6兆6672億元あり、税収の41.6%を占めています。中国の付加価値税は標準税率が13%で、特殊なもの以外のすべてにかかります。

ただし、中国の場合、税込価格表示が基本になります。日本のように本体価格と付加価値税額を内税表記、外税表記するようなこともほとんどなく、ひょっとしたら多くの中国人は付加価値税を支払っていることに気がついていないかもしれません(レシートを見ると、本体価格と付加価値税額の内訳が記載されています)。

また、日本と同じ名前の消費税もあります。付加価値税は付加価値に対してかかるものであるため、流通の各段階の企業、消費者が支払います。しかし、仕入れをした時も付加価値税を支払っているので、相殺をし、自分がつけた付加価値に対する付加価値税を支払うことになります。このあたりは、日本の消費税のインボイス制度と似た構造になっています。

一方、消費税は最終消費のみにかかる税金で、小売店や販売業者が消費者から徴収し、納付をします。2024年には1兆6532億元の税収があり、税収の10.3%を占めています。

消費税の対象となるのは嗜好品です。具体的にはタバコ、酒、高額化粧品、石油類、バイク、自動車、ゴルフ道具、ボートなどです。例えば、一般的なタバコは税率36%ですが、高級タバコになると56%になります。排気量1,000cc以下の小さな自動車は1%ですが、排気量40,00ccの大型車になると40%になります。

消費税も日々買い物をする日用品は無関係なので、これも気にしていない人が多いように思います。

次に多い税収は法人税

もうひとつ大きいのが法人税=企業所得税です。2024年の企業所得税は4兆887億円で、税収全体の25.5%になります。

法人税は営業収入の25%が基本ですが、さまざまな優遇があり、実質20%を切る感じです。

まず、営業収入からさまざまな経費を控除し、残りが課税所得になりますが、企業によってさまざまな優遇があります。例えば、零細小企業の場合は、課税所得が300万元(約5800万円)までの部分は25%の基礎控除があり、税率も20%になります。また、国が指定する先端テクノロジー企業は税率が15%になります。さらに、数年で変わることもありますが、国家重点業種の企業は税率が10%になります。現在の重点業種は半導体設計とソフトウェア開発企業です。

Next: 負担感を感じさせない仕組みがある?日本と比較すると…

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