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本当にWin-Win?日本製鉄「USスチール」買収完了…世界3位の座と引き換えに払った代償=原彰宏

異例の条件付き買収

バイデン前大統領がこの合併に反対した表向きの理由は「経済安全保障の観点」からです。

トランプ大統領も同様の観点から反対していたのですが、米国政府は日本製鉄と国家安全保障協定を結んだことで、いっぺんに様相が変わってきました。

協定の内容は、以下などが盛り込まれています。

・2028年までにUSスチールの設備に110億ドル、日本円でおよそ1兆6,000億円を投資する
・米国内の製造拠点の生産能力を維持する
・USスチールの経営の重要事項について拒否権を行使できる「黄金株」1株をアメリカ政府が取得する

「黄金株」とは、会社法で定められた拒否権付種類株式の一種で、特定の株主が1株でも保有することで、株主総会や取締役会における重要事項の議決に対して拒否権を行使できる株式です。

この「黄金株」によって、米国政府はUSスチールの独立取締役1人を選任できるほか、大統領の同意を得ないまま、会社が本社の移転や社名の変更、米国内の製造拠点の閉鎖や休止などはできないとしていて、アメリカ政府がUSスチールの経営に一定の影響力を持つ形となりました。

「黄金株」で米大統領が拒否権を持つ事項を整理すると、以下になります。

・USスチールのピッツバーグからの本社移転
・米国外への移転
・社名変更
・140億ドルの投資に関する削減・撤回・延期
・生産・雇用の米国外への移転
・一定の期間をおかない向上の閉鎖や休止
・従業員の給与、反ダンピング、原材料の米国外からの調達、買収等に関する保護

この「黄金株」が、労働組合のUSW全米鉄鋼労働組合の買収反対姿勢を変えさせたようです。

米国側から見て、経営難に陥っていた124年の歴史を誇るUSスチールを救うために、日本の技術力が必要なのです。それはアラスカ州におけるメタンハイドレート開発やLNG開発においても同じで、日本の力が必要なのです。

さて、日本製鉄とUSスチール買収計画に「Go」を出したトランプ大統領の今回の“ディール”は、米国にとっては成功したと言えるのでしょうか。

条件はともあれ合併ができたことは日本製鉄にとっては良いことなのでしょうが、日本国にとっては良かったことなのでしょうか…。

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