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「ヤクルト1000」ブーム終了で株価低迷…長期投資家は買い?海外展開に課題と光明、バフェットならどう判断するか=元村浩之

明るい話題:アメリカ市場の大きな可能性

ネガティブな話が多い中で、最も明るい話題はアメリカ市場の成長です。

<急速に伸びる販売本数と店舗数>

アメリカでのヤクルトの販売本数は、現時点では1日あたり約70万本と、日本と比べるとまだ小さいですが、取り扱い店舗数がどんどんと増えてきています。アメリカにはヤクルトレディは存在せず、店頭でのデモンストレーションを通じて認知を広げ、販売を拡大しています。この成長に伴い、ヤクルトはアメリカに第2工場を建設し、高単価で売れる製品を今後も投入していく計画です。

<移民による市場浸透:ヒスパニック・アジア系コミュニティの役割>

具体的にどのスーパーで展開しているかというと、アジア系のスーパーやヒスパニック系のスーパーが多いです。これは、アジアやメキシコ、ブラジルといった国々では1960年代や80年代からヤクルトが進出しており、ヤクルトに馴染みのある人々が移民としてアメリカに入ってきているためです。

彼らが「ヤクルトがいいよね」という形で、移民の増加とともに取り扱い店舗数も販売本数も徐々に増えている状況です。私もレディットという口コミサイトを見たのですが、「アメリカでヤクルトはどこで売っているのか」といったやり取りが多く見られました。これは、ヤクルトに馴染みのある国の人々が、アメリカでもヤクルトを求めていることの証拠でしょう。

これは、親がポケモンに馴染んでいるから子供にもさせる、という現象に似ています。ヤクルトに慣れ親しんだ親が、自分の子供にも飲ませてあげたいと探し、その需要に応える形で販売が伸び、コミュニティ内で一般化していく。このような形でヤクルトがアメリカ市場に浸透していると考えられます。

特にヒスパニック系の人々は子供を多く産む傾向があるため、今後人口が増加すれば、かつてヤクルトが発展途上国で展開してきた活動が、今アメリカで花咲き始めるような状況になるかもしれません。米州の利益の伸びを見ても、2021年頃からぐっと伸びており、アメリカとメキシコの両方が牽引していますが、特にアメリカでは単価が高い商品が売れているため、利益率が高い製品が貢献していると推測されます。

ヤクルトの中期経営計画:2030年に向けた目標と挑戦

ヤクルトは先日、中期経営計画を発表しました。

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2030年には売上高7000億円、営業利益900億円を目指すと掲げています。

各国別の内訳を見ると、日本市場での売上をがっつり伸ばしていく計画を立てています。

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また、アメリカ(米州)も年平均約9%の成長を目指すとしており、日本、アメリカ、アジアの3軸で伸ばしていこうという目標です。

営業利益の増加額で見ると、日本が215億円、アジアオセアニアが118億円、アメリカが103億円と、日本が最も大きな増加額を計画しています。これは、日本が最大の市場であるため、ヤクルト1000に続く「第二の矢」となる高付加価値品を出す思惑があると考えられます。中期経営計画における売上成長率は、市場の拡大予測とほぼイコールであり、他社からシェアを奪うというよりは、市場全体の成長に合わせた堅実な目標設定と言えるでしょう。人口が成長しない日本で利益を増やすには、やはり高付加価値製品が不可欠です。

Next: 堅実で変化に乏しい企業文化?投資家目線で見ると…

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