ここは、単なる想像になりますが、中国事業の運営をしたのが、台湾の子会社「亜州蔵寿司」であったことが大きなポイントになっているかもしれません。台湾でのくら寿司は60店舗を展開しており、すっかり定着をしています。台湾は、中華圏といっても生魚に抵抗のない地域です。サーモン、マグロを中心に刺身は普通に食べられ、スーパーでも「刺身用」「生食用」と表記した海産物が販売されています。
そのため、台湾の寿司メニューはほぼ日本と変わりなく、亜州蔵寿司は台湾での成功体験をもとに中国に進出したのではないかと思います。
中国は歴史的にも生魚を食べません。海水魚の漁場は黒潮圏です。アジア圏の地図を見ていただくとわかりますが、中国の港から黒潮圏まではかなりの距離があります。今であれば遠洋漁業をすることは難しくはありませんが、近代になるまでそんなことはできなかったでしょう。このため、海水魚を食べる習慣がなく、海産物と言えば、エビ、カニ、イカ、タコ、貝などの近海物に限られています。このような魚ではない海産物を生食することはあるものの、輸送をする関係から、生食をするのは大連や広州などの港がある街に限られています。
一方、中国で魚といえば淡水魚になります。しかし、中国の川の流れは緩やかで、後は湖沼の淡水魚になりますから、寄生虫のリスクと泥臭さが抜けないという問題があります。そのため、しっかりと熱を通し、味の強いソースで和えるという中華料理の技法が発達しました。
そのため、生食をするという習慣がありません。上海あたりでは酔蝦(ズイシャー)という料理が食べられます。エビを生きたまま酒を満たしたボールにつけて、暴れているのを捕まえて食べるというものです。しかし、これも一般的に普及している日常食ではありません。宴会を盛り上げる料理のひとつであり、飲食店が食材の新鮮さをアピールするための料理です。女性の中には残酷だと言って、あまりいい顔をしない人も増えています。
その他、地域によって生食食品はありますが、いずれも珍味の郷土料理であったり、近代になってマレーシアやシンガポールの華人たちの生食料理が中国にも輸入されたというものがほとんどです。
日本の寿司チェーンは世界に受け入れられるか
くら寿司の発表によると、今後は北米、台湾などの海外市場に注力をするということなので、しばらくの間は中国再進出はないようです。個人的にはせっかく高い授業料を支払ったのだからもったいないと思いますが、それは企業の戦略なので仕方がありません。
一方、スシローは今後、この成功を糧にさらに中国で飛躍をしていけるでしょうか。それにはまだまだ乗り越えなければならない課題がたくさんあります。
ひとつは、北京の店舗――スシローが抱える課題
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』(2025年7月14日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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