資本コストの実際
下図は上の図と同じく2016年初から2017年3月27日まで、日経平均の資本コストとこの期間の平均値、および平均からの平均的な変動の範囲を示したグラフです。
日経平均の資本コストと平均値、平均変動幅(通常の変動範囲)
2016.1.4~2017.3.27
図中の(1)~(4)は上の日経平均等の図の(1)~(4)に相当します。ここではこれらが上の図とは逆の動きとなっています。すなわち、相場がファンダメンタルズと関係のない外的な要因(新興国ショック、Brexit、トランプ・ショック)で急落する時にリスクは跳ね上がります。
一方、トランプ・ショック後、12月半ばに日経平均が通常変動の上側まで相場がシフトアップする(3)から(4)の過程では一貫して低下しています。資本コストは確かにファンダメンタルズで説明できない相場の変動を説明していると言えます。
また、図中に3本の横線がありますが、中央の黒線は2010年5月から直近の2017年3月までの資本コストの平均値、黒線を挟んで上下にある赤線は平均値からの平均的な変動幅を上下にとった位置を示します。
(*)2010年5月はリーマン・ショックの異常事態から正常に戻った時期です。すなわちこの期間は実際に使えるデータを可能な限り全て使うことを意味します。
平均値の意味は、資本コストは過去の局面で様々な値をとってきましたが、投資家は株式投資に対して要求する収益として過去のリターンの平均を確保すればよしとすることとして、標準の資本コストを表すものとします。値は6.57%で、株式投資において投資家は平均的に6%台半ばのリターンを要求することを示します。
また、平均値の上下にある赤線の範囲は、資本コストがこの範囲内にあれば通常の変動の範囲内ということで、資本コスト、つまりリスクは異常な状態にはなっていないと判断できる基準を示します。
実践の場に適用するには
こうした中で足元の資本コストの動きを見ると、一時低まったリスクが高まる傾向にあります。ちなみに、市場がリスクの水準を標準的なリスク水準(資本コストの平均値、6.57%)を求めると、これに相当する日経平均は1万8,400円程度になります。一方、要求するリターンが再度低下し、平均変動幅の下側である6.1%まで低下するとこれに対応する日経平均は1万9,800円程度になります。リスクの評価が1割弱変わることで相場水準は大きな影響を受けることが分かります。株式市場はかなりセンシティブで注意深い対応が必要な状態にあると言えそうです。
なお、為替市場でドル安が進む局面ではリスクが高まる傾向がある点は留意すべき特徴と言えます。
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※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2017年3月28日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
『資産運用のブティック街』(2017年3月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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