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韓国「デジタル先進国」6位の虚像。鉄道無賃乗車30万人…日本に学ぶ現場型デジタル化=勝又壽良

「青年・国民・高齢者交通費パス」とは、次のような内容だ。

1)青年(19~39歳)層
公共交通の利用頻度に応じたキャッシュバックや割引制度を強化し、若年層の経済的負担を軽減する。青年層と言えば、人生で働き盛りである。この層へ政府が交通費で支援するとは、摩訶不思議な感じがする。交通費も払えないような青年層が存在する社会では、安定した経済成長など不可能であろう。

2)高齢者(65歳以上)層
従来の地下鉄無料制度を改定し、タクシーやバスなど他の交通手段にも対応可能な年間一定額のプリペイドカードを提供する案が議論されている。この変更には、都市間の公平性を高める狙いがあるという。高齢者は、健康上の理由で自宅に籠もりがちである。それだけに、外出する機会を増やすべく交通費の無料制度を作るのは意味のあることだ。

3)全世代
「K-パス」のような新たな統合交通カードを導入し、利用者が月に一定回数を超える場合に交通費の一部を還元する仕組みを拡充する。このカードは、広域バスや鉄道にも適用され、地域間移動の利便性を向上させる。新たな統合交通カードによって、全世代に月に一定回数を超える場合に交通費の一部を還元するという。「正規の運賃を支払う」一種の鉄道利用キャンペーンである。

政府が、全国民に対して公共交通機関利用を奨励し、利用頻度に応じて特典を与える意図とは何か。

韓国は、民間鉄度はごく一部であり過半が公共機関の経営である。あえて特典を与えなくても、国民が利用するはずである。実は、利用しても運賃を払わない乗客が、最低で年間30万人もいるというのだ。これは、鉄道が経費削減目的で改札を廃止した結果である。車内の検札に遭遇しない限り、「タダ乗車」可能になる。無賃乗車には正規運賃の2倍を請求しているが、それでも後を絶たないのだ。

今でも行なう車内検札制度

韓国の鉄道が改札廃止の理由が、デジタル装置導入コストとメンテナンスを削減する目的であった。「デジタル先進国」韓国としては、むしろ積極導入すべきところを逆走した。痛恨の極みであろう。不思議なのは、職員による車内検札を行なっていることだ。この方が、人件費アップもあってはるかにコストアップ要因になる。

こういうコストの比較計算が、なぜできなかったのか。

デジタル化の初期投資は金額的に大きくても、減価償却によって年間負担は漸減される。職員の賃金は、逆に年々増える漸増型である。以上のような合理的コスト計算比較が、放棄されたのは行政としての怠慢としか言いようがない愚かな選択であった。労組が、強引に鉄道職員を増やさせる目的で行なった策とみられる。

日本のJRは、デジタル化投資を積極的行なっている。これによって、運賃以外の派生的収入増を目指し多角化経営が可能になる。例えば、モバイル決済事業の拡大だ。JRが、このような収益源拡大に積極的なのは、民営化されている当然の結果だ。

韓国公共交通機関は、国家などの公共機関による経営である。赤字になれば、政府が財政措置をしてくれるという安易さが目立っている。日本では、職員による改札を廃止して、デジタル化投資を行なった。韓国では、こういう自立型「インセンティブ」が、働かない社会システムである。これこそ公的経営の最大の弱点である。ならば、韓国でも日本同様に民営化へ踏み切れば済むはず。だが、そういう議論は韓国でタブーである。左派右派問わず、不問視されているのだ。

この裏には、韓国ならではの伝統意識が働いている。

Next: 考え方が日韓真逆?デジタル先進国らしからぬ実情とは…

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