今後の成長戦略とリスク要因
<中長期経営方針:5つの柱>
オリオンビールは、今後の成長に向けて5つの中長期経営方針を掲げています。
- 沖縄県内での圧倒的シェアの確立(継続)
- 沖縄県外でのパートナーシップ強化
- 海外での独自ポジション確立
- ブランドライセンス事業の強化
- 観光ホテル事業を通じた沖縄体験の提供
県民と観光客の両方からの需要を継続して取り込む。
アサヒビールや県外の卸売業者との連携を強化し、県外での売上を伸ばす。
代理店との関係強化、製品のプレミアム化、製品ポートフォリオの拡充を通じて海外展開を推進。
「ちいかわ」などの人気キャラクターとのコラボレーションも視野に入れ、ライセンス収入のさらなる拡大を目指す。
近鉄グループやテーマパーク「ジャングリア」との連携を強化し、観光客に「沖縄での特別な体験」とともにオリオンビールを提供する。
<成長ドライバー:観光客数の増加とEC・海外事業の伸長>
- 沖縄の観光客数増加
コロナ禍で一時的に落ち込んだ観光客数は、V字回復を遂げており、年間約1,000万人(995万人)に迫っています。2030年~2035年には年間1,200万人まで増加するとの予測もあり、観光収入も9800億円に増加しています。この観光需要をうまく取り込むことは、オリオンビールにとって非常にポジティブな要素です。

- EC事業・海外事業の成長
EC事業は年平均成長率(CAGR)57%と非常に高い伸びを示しており、海外事業も大きく成長しています。県内以外の市場にも着実に足場を広げています。
<潜在的リスク要因>
一方で、投資判断においては以下のリスクも考慮する必要があります。
- 県外での市場存在感の低さ
- 観光客への依存
- 沖縄県人口の減少予測
国内のビール市場全体におけるオリオンビールのシェアは、約1%と決して高くありません。国内大手との競争は依然として激しいです。
コロナ禍での業績悪化が示すように、観光客数の変動に業績が左右されるリスクがあります。
沖縄県の人口は2025年頃まで増加傾向にありますが、その後は横ばいから緩やかに減少していく見込みです。県内需要の拡大には限界があるでしょう。

- 酒税減税措置の廃止
- ビール市場全体の縮小と競争激化
沖縄県のお酒には、本土復帰後の経済的配慮として、これまで酒税の減税措置(約15%軽減)が適用されてきました。しかし、この措置は2026年10月に完全に廃止され、本土と同じ税率に統一される予定です。これにより、オリオンビールには15億円から20億円程度の財務インパクトが発生すると試算されており、営業利益が減少する可能性があります。値上げなどで対応することも考えられますが、悪影響は避けられないでしょう。
国内のビール市場は全体的に縮小傾向にあり、クラフトビールや輸入ビールなど新規参入も多く、競争は激化しています。
オリオンビールIPOへの投資判断
オリオンビールへの投資はありなのか、総合的に判断してみましょう。
<魅力的な配当政策と株主優待>
- 配当政策
- 高い配当利回り
- 株主優待
配当性向50%またはDOE(株主資本配当率)7.5%のいずれか高い方を採用する方針を掲げており、配当には非常に前向きな企業と言えます。
1株あたり40円の配当を予定しており、仮条件800~850円を基準とすると、配当利回りは4.7~5.0%となります。
1,000株以上保有でオリオンTシャツや酒類セットなどの優待も設定されています。ただし、1,000株の購入には約80万円が必要となるため、優待目的であれば直接購入の方が効率的という考え方もあります。