半導体素材で即時反撃
中国は、「自信満々」で日本へ立ち向かう姿勢である。だが、意外と脇は甘いのが実態だ。
中国政府が11月19日、日本産水産物の輸入を事実上停止した。農林水産省によると、中国政府から放射線検査に不足があるとの伝達があった。日本は、中国に向けた水産物の発送を11月に再開したばかりだった。中国は、日本へホタテで打撃を与える積もりだが、「空振り」に終る見通しである。これまでの禁輸措置で、日本はベトナムや米国へ市場を確保しているからだ。
水産庁によると、ホタテの全世界への輸出額は23年689億円、24年695億円。25年も9月までで602億円と、前年同期比38%増で伸びており、脱中国に成功しつつあるのだ。中国は、日本の実態を調査もしないで、「禁輸」という孫悟空の如意棒を振り回している感じだ。
この如意棒が、レアアースへ向けて振りかざしたらどうなるか。中国が最も狙っている分野であることは周知のことだ。すでに、2010年に日本へ発動した大失敗した事例がある。日本が、冷静に対応して無傷で終わったからだ。中国は、今度こそはと「捲土重来」をきしてくればどうなるかだ。
中国は、日本向けへレアアース輸出を止めれば、日本は音を上げると読んでいるとすれば、日本の「反撃力」を見落としていると言うほかない。反撃は、半導体素材である。次の素材は世界的な高シェアを誇っている。中国半導体は、日本の高シェアからみて「被害甚大」は間違いない。
素材 日本の世界シェア 中国の代替困難性
フォトレジスト(EUV) 約90% 極めて高い
高純度フッ化水素 約70% 高い
シリコンウェハ 約60% 中~高
中国半導体は、日本の世界的高シェアからみて必ず輸入している。フォトレジスト(EUV)は、世界シェア90%である。中国半導体企業の9割は、必ず使用している計算になる。これ以外にも、高純度フッ化水素やシリコンウェハは、70~60%の世界シェアである。相当の確率で使用しているとみて間違いない。
日本が、対中向けにこれら半導体素材輸出を一挙に輸出禁止したらどうなるかだ。中国半導体業界は大混乱に陥る。それは、次のような形をとって表れるはずだ。
1)数週間で製品歩留まりが悪化し、1~3か月で生産ラインは停止へ追い込まれる。半導体生産過程では、素材と製造機械との親和性が極めて高い点が特色だ。この結果、素材を変えると、途端に歩留まり率が低下する事実が知られている。中国半導体が、前触れもなく突然の素材供給停止に巻き込まれれば、驚天動地の事態を迎えるはずである。新しい代替材に変えても、その検証には「年単位の時間」がかかるのだ。
2)中国は、これまでの日本の対応が静かであることから、威嚇すれば驚くといった「政治的に弱腰」とみている節がある。日本は、もっと「骨太」なのだ。日本が,電光石火のごとき対応すれば、中国はビックリ仰天することは確実である。
「論理学」不毛の悲劇
中国は半導体とAIを次期戦略産業と位置づけている。その基幹部門は、日本に握られていることに気付かないのだ。世界覇権を目指すと豪語する割には、肝心な部分が抜けている国である。
この迂闊さはどこから来るのか。政策面に、「合目的的」という部分が欠落しているからだ。これは、中国で歴史的に論理学が育たなかった問題に帰せられる。