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中国、レアアース禁輸で日本を脅すも自滅へ。習近平が恐れる日本の「切り札」とは=勝又壽良

中国は、始皇帝時代に論理学の元祖というべき思想家、墨子の流れを切断して闇に葬った経緯がある。以後、法家思想という統制によって社会秩序を維持する流れに変わった。現代の権威主義は、法家思想そのものである。中国外交が、現在のように「威嚇」を前面に据える戦狼外交に堕落しているのは、法家思想に基づくもので、合目的的という論理学の思考欠如という欠陥によるのだ。

論理学は、「演繹や帰納」という過程によって、正しい認識や判断を得るための推論方法を導くものだ。日本への威嚇が、何をもたらすか。そういう「推論」過程が、習近平氏には欠落している。ただ、腕力を振るって相手を威嚇すれば、物事が思い通に解決するという「単純思考」の持ち主とみるほかない。現代外交では、タブーなのだ。

日本には、半導体素材以外に中国へ対抗する手段を持っている。次のような技術である。

分     野   内      容      効     果
高速鉄道車両部品  バネ・ベアリング      高速鉄道車両に不可欠。代替困難
精密測定機器    半導体製造に不可欠     先端製造ラインに即時影響
高純度フッ化水素  半導体・ディスプレイ製造  日本依存度の高い分野
          に不可欠
医療用精密部品   MRI・内視鏡など高精度部品 医療機器産業に影響。代替困難

高速鉄道車両部品の「バネ・ベアリング」は、高速列車の振動を抑えるうえで不可欠である。中国は、高速鉄道の速度(時速)で世界一と自慢している。これは、広い国土と日本の鉄道部品が供給されている結果だ。いわば、日本技術が裏で支えているに等しいことだ。精密測定機器や高純度フッ化水素は、半導体製造に大きな役割を果している。医療用精密部品ではMRI(核磁気共鳴画像)が、精密診断に欠かせない医療装置である。以上を見てわかることは、中国に精密工業が育っていないことである。日本へ大きく依存している。

中国で、精密工業(精密機械・高精度部品・先端素材など)が育たない理由は何か。次の要因が指摘できる。

1)人材の質と育成の課題:中国では、若年層の「製造業離れ」が進んでおり、特に高度な技能を持つ技術者の不足が深刻だ。若者の多くが工場労働を敬遠し、ギグエコノミーやホワイトカラー職を志向する傾向が強まっている。これにより、精密加工や熟練を要する工程を担う人材が育ちにくい状況が続いている。

2)短期利益志向と過当競争:中国製造業は、規模の経済とスピードを武器に成長してきたが、過当競争による価格破壊が常態化している。このような環境では、長期的な品質向上や精密技術への投資が後回しにされる。結果として「精度より量」の構造が温存されている。EV(電気自動車)が、この適例である。品質よりも価格競争にシフトしている。

3) 制度的・文化的な制約:精密工業の発展には、試行錯誤と失敗を許容する文化、現場の創意工夫、長期的な信頼関係が不可欠である。中国の法家思想的な統制志向が強い環境では、現場の裁量や創造性が抑制されやすく、柔軟な改善文化が育ちにくいのだ。これは墨子的な「目的的合理性」尊重とは対照的な世界である。

4)内需の弱さと外需依存:中国の製造業は輸出依存が強く、内需の弱さが高付加価値製品の育成を妨げる構造要因である。精密工業は、安定した内需と長期的な顧客関係の中でこそ育成可能である。これらの欠如が成長制約になっている。日本では、「町工場」が宇宙産業に欠かせない精密技術を保持している。精密工業が、根を張っている証拠だ。

戦狼外交へ先手必勝策

中国外交は、合目的的政策を苦手として「直截的(ちょくせつてき)」な戦狼外交に訴えるパターンである。各国には、これによる被害を抑制する手段がないのか。

実は、EU(欧州連合)が「反威圧措置規則(ACI)」を2023年12月に施行した。ACIとは、第三国が経済的手段を使ってEUやその加盟国に対して、政治的な圧力をかける行為(経済的威圧)に対抗する新たな法的枠組みである。

Next: 孤立するのは中国?ホタテ輸入停止ほか「経済的威圧」がもたらすもの

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