「追加調査」の致命的な矛盾
「総理のご意向」で始まった追加調査の結果は、15日にも公表される見通しだと報じられているが、もともと文部科学相と官邸は「徹底的に調査し、結果がまとまり次第可能な限り速やかに発表する」としている。
しかも、萩生田官房副長官は会見で「文書が存在するかどうかと、その中身が本当かどうかは別である」という見解を示しており、追加調査の目的はあくまで「総理のご意向」があったと記されている「怪文書」の存否確認であり、「総理のご意向」の存否確認ではないことを強調している。
仮にそうだとしたら結果はイエス、ノーの二者択一であり、「結果をまとめる」必要はないはずだ。
それにもかかわらず、わざわざ「結果がまとまり次第可能な限り速やかに」というのは、追加調査で容易に存在が確認されるはずの「出所も入手経緯も明らかな文書」が、なぜ最初の調査で見つからなかったのか?なぜこれまで「怪文書」と切り捨て存在を認めようとしなかったのか?の言い訳づくり、口裏合わせに時間が必要だからだと勘繰られてもしかたがない。
筋が通らない「犯人捜し」
またここに来て、文部科学省が行う追加調査の本当の目的が、「怪文書」を野党やマスコミにリークした犯人捜しであるという指摘も持ち上がってきている。
この疑惑に関して国会で追及された文部科学副大臣の口からは、「一般論」と断りを入れながらも、「非公知の行政運営上のプロセスを上司の許可なく外部に流出させることは、国家公務員法(違反)になる可能性がある」という発言も出てきている。
確かに、一般論として「業務上知ることのできた秘密」を許可なく外部に漏洩することは、守秘義務に違反しているといえる。
しかし「怪文書」を野党やメディアにリークした官僚を、文部科学省が国家公務員法違反に問う時点で、「総理のご意向」「官邸最高レベルの話」など一連の疑惑は「非公知ではあっても行政運営上のプロセス」であり「業務上知ることのできた秘密」、ひいては事実だったということになる。
そうなれば、文部科学省みずから「怪文書」の内容が事実であることを認める、というおかしな構図になってしまう。
そもそも国家公務員法では「行政は国民に対して公開で行われることが原則」だと謳っており、「総理のご意向」や「官邸最高レベルの話」が非公開であること自体が法の精神に反することになる。
「怪文書」に記載された「総理のご意向」や「官邸最高レベルの話」がまったくのデタラメであるというのであれば、「怪文書」を外部にリークした官僚が問われるのは国家公務員法違反ではなく、名誉棄損や威力業務妨害でなければ筋が通らないはずである。