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自由貿易の名の下に「戦前的グローバリズム」に回帰するアベノミクス=島倉原

「戦後レジームからの脱却」のはずが…

そもそも、グローバル化の背景にあるのは金儲けを追求する資本の論理。そこに国際的な資本移動の活発化が伴うのは、19世紀も現代も共通しています。結果として、各国の金融市場は不安定さを増して金融危機の発生頻度が高まり、それがまた、実物経済にも悪影響を与え、格差の拡大も助長しています。

その典型例が、現代においては2008年に生じたリーマンショック。また、1930年代の世界恐慌も、第1次グローバル化がピークアウトした後の事件ですが、それ以前の国際資本移動の進展によって増幅された経済危機であったと言われています。

その混乱がファシズムの台頭を招き、第2次世界大戦につながったとすれば、ここでもまた、グローバル化が国際紛争につながったと言えるでしょう。

しかも、グローバル化の下でも内需すなわち国内経済主導の経済運営を行い、長期的に貿易依存度を低下させる国の方がむしろ経済発展している。その典型例が第2次大戦以前のアメリカ、あるいは戦後から1990年代前半までの日本です。

対して、明治以降の日本は第1次グローバル化時代終焉後もグローバリズム路線を継続し、内需主導の経済成長につながる高橋財政の直前に満州事変を引き起こし、後戻りができないまま破滅的な太平洋戦争に突入しています。

格差の大きさも含め、当時の政治経済体制にはその意味で明らかな欠陥があった。これもまた、前項のグラフから読み取るべき歴史の教訓ではないでしょうか。

消費税増税をはじめとする緊縮財政によって内需を冷え込ませる一方で、グローバリズムを推進するアベノミクス。「戦後レジームからの脱却」を掲げた首相の下での経済政策が、「戦前的なグローバリズムへの回帰」となっているのは歴史の皮肉でしょうか。

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年7月13日号より

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