Appleの決算は単なる一企業の決算を超えて、スマホ業界全体の羅針盤となり得ます。今回は特に重要だと思われる点を4つに絞って、決算書を詳しく見ていきます。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2017年7月12日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:シバタ ナオキ
SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。
スマホ業界全体を左右するApple決算、4つの重要ポイントを解説
いまだ成長の止まらない怪物企業
今日はAppleの2017年1月~3月期の決算を見てみたいと思います。
売上は$53B(約5兆3,000億円)、YoY(前年比)+5%となっています。これだけの規模で、いまだに成長しているというのがすごいですね。
製品別で見ると、iPhoneがほぼYoY±0、iPadがYoY-12%、MacがYoY+14%となっています。
Appleの決算というのは、単なる一企業の決算を超えて、スマートフォン業界全体の羅針盤ともなるような決算とも言えます。そこで今回は、Appleの決算の中でも特に重要だと思われる点を、4つに絞って詳しく見てみたいと思います。
#1 中国でのiPhone販売が減速
1つ目は、中国におけるiPhoneの販売のペースが落ちてきたという点です。
この数字を見る限り、中国における売上がYoY-14%と、大きく落ち込んでいることがよく分かります。
スマートフォンのアプリ内課金の予測では、中国はこれからもまだまだ大きく伸びる余地があるとされていますが、iPhoneの販売に関してはもうすでに一巡してしまったと見るのが正しそうです。
#2 インドで売れているiPhoneは何!?
「Rest of Asia Pacific」のセグメントを見ると、売上がYoY+20%と、最も高い成長率で成長しているエリアだということが分かります。
中でもインドは、これからの5年間でスマートフォンが10億台販売されると予測されていますが、Appleは現時点で、インドのスマートフォンの3%しか市場シェアがない、とされています。
最大の問題はコストで、iPhone7は一番安いモデルでも$713(約71,300円)します。2016年の第4四半期で、インドで販売された$450(約45,000円)以上する高級スマートフォンの内、62%が iPhoneであったという具合に、Appleは高級スマホの市場では非常に高いシェアを取れています。
一方で、インドで販売されているスマートフォンの80%が$150(約15,000円)以下であり、約半分は$120(約12,000円)以下で販売されています。
そんなインドでもAppleブランドは非常に強いわけですが、インドで2016年に売れたiPhoneの内、55%は2013年に発売されたiPhone5Sの中古品で、$250(約52,000)程度の販売価格であったといわれています。
皆さんが下取りに出したiPhoneが、インドなどの国に回って流通しているということになります。それ以上に重要なのは、このような二次流通を通して、Appleのユーザーが、インドという最も成長率の高い国で普及する、ということです。
アプリ開発者は、国際展開を考える上で、これまでインドにフォーカスすることはあまりなかったかもしれませんが、これだけのペースでiPhoneが普及しているとなると、今後インド市場に向けたアプリのマーケティングも必要になってくるタイミングが来るでしょう。
#3 「その他製品」の売上がYoY+31%と絶好調
「その他の製品」と呼ばれるセグメントは、例えば Apple watch、Airpods,、Beatsといったウェアラブル製品、そしてApple TVなども含みます。
このセグメントは、四半期での売上が$2.8B(約2,800億円)あり、YoY+31%と、異常に高い成長率を見せています。
決算で触れられたポイントをいくつか整理します。
- Apple Watchが非常に好評で、YoY+100%というスピードで成長しているということです。調査会社の推計値では、四半期あたり300万台のApple watchが販売されているとのことです。
- ワイヤレスイヤホンであるAirpodsも異常に好調で、顧客満足度が98%を超えたという発表がありました。
最近発表されたHomePodもこのセグメントに入ってくることになりますので、ますますこのセグメントの成長率、そして全体に占める売上のシェアが大きくなっていくと考えられます。
#4 App Storeなど「サービス売上」もYoY+18%と絶好調
「サービス売上」も非常に大きく成長しているセグメントです。四半期当たりの売上が$7B(約7,000億円)で、YoY+18%で成長しています。
このセグメントの決算で述べられたポイントを整理してみたいと思います。
- ・アプリの売上がYoY+40%、アプリの開発数がYoY+26%と、非常に大きく成長しています。
- アプリの売上増加の最大の要因は、アプリ課金に継続課金を導入したことが理由で、現時点で既に1億6500万人が継続課金を利用しています。
- Apple payの取扱高はYoY+450pcと非常に大きく成長して、現時点で15カ国で利用できるようになっています
この、特にアプリ関連のマーケットに関しては、今後も大きな伸びが予測されています。App Annieのレポートからいくつか抜粋してみます。
スマホのアプリ関連のマーケットは、2016年の$1.3T(約130兆円)から2021年に$6.4T(約640兆円)にまで成長すると予測されています。
ユーザーあたりの年間支出額ですが、2016年時点では$379(約37,900円)をアプリに使っていたのに対し、2021年には約3倍の$1,008(約100,800円)をアプリに使うようになると予測されています。
これは、これまで別のところで消費されていたものが、アプリ経由での消費に置き換えられる部分も含まれていますが、別の見方をすると、アプリがこれからも我々の生活の中にどんどん浸透していく、ということも言えるでしょう。
そしてこのアプリ経由の売上のうち、30%を常に取ることができるAppleのサービス売上セグメントは、これからも大きく成長するのではないでしょうか。
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Source:Apple Inc. Q2 2017 Unaudited Summary Data
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