アベノミクス5年間の総括は?
もう1つ、今ほとんど人々の視野に入っていないかのようだが、18年3~4月はアベノミクス開始から丸5年、黒田東彦=日銀総裁の任期切れ、という大きな節目がやってくる。
アベノミクスは、本誌が一貫して主張してきたように、そもそも日本経済の中心課題が「デフレからの脱却」だとする状況認識が間違っているし、そのための「金融の異次元緩和」という政策手段がまるで見当が狂っている。結果、4年半後の今、改善したのは安倍首相が大好きな「有効求人倍率」くらいで、経済も産業も財政も何ら中長期の希望を見出すに至っていない。
本当を言うと、昨年9月に日銀自身が提起した「総括的検証」が、この酷い誤りを正す好機であったのだが、政府・日銀はもとよりマスコミやエコノミストも徹底的な議論をせずに滑ってしまい、そのためアベノミクスが何を成し何を成さなかったのかは曖昧の霧の中にある。
しかし18年春というタイミングをこのまま何となくやり過ごすということはあり得ず、アベノミクスと黒田日銀の功罪について徹底的な吟味が必要で、それなしには18年10月の消費税10%化の妥当性の判断も立つことがない。またそれと直結して、2020年度に「基礎的収支(プライマリーバランス)」黒字化という目標がすでに達成不能になった中で、では一体どうするのかということが議論になる。はっきり言って、お試し改憲みたいな日本会議系右翼のお遊びに付き合っている場合ではないのである。
野党の課題は4党による選挙協力
この状況で、野党にとしては、
- 安倍首相=日本会議のずる賢い改憲策動を叩き潰し、安倍政権を潰す
- 野党4党協力による「日本版オリーブの木」態勢で総選挙を戦い、野党連合による政権奪回を目指す
- その場合に民進党代表が真ん中に座って「首相候補」としてそれなりの存在感を示し、その両側に右大臣・左大臣という感じで小沢一郎と志位和夫が寄り添っているという形が可視化されることが重要で、その場合に真ん中に座るのが蓮舫でいいのかが問われる。小沢は、民進・社民・自由合流論だが、小沢が民進に入ると代表代行とか顧問とかになって顔が見えなくなるので、自由党党首のままで、右大臣・左大臣という見栄えを保つことが大事ではないか。
- 4党の政策合意はそれほど難しいことではなく
・安保法制、共謀罪法を廃止して、専守防衛に立ち戻る
・沖縄県民の総意に沿って普天間、辺野古の問題を解決する
・原発は順次廃止しつつ、太陽光や風力など自然エネを急速に拡大する
・アベノミクスは止め日本型福祉社会の形成と財政再建を両立させる
――というあたりで大雑把に合意できるのではないか。
それが成り立てば政治は一遍に面白くなる。6月上旬に会った某民進党幹部は「次の総選挙で民進党が現有95議席から約150へ、共産党が21から30へと、それぞれ1.5倍化すれば、合計で180、社民と自由を合わせれば190議席程度で、結構いい線まで行く。それで次の総選挙で政権奪回だ」と言っていたが、都議選後に会った別の同党トップ幹部は「いや野党選挙協力が巧く組めれば、次の次と言わず、次で民進と共産が議席倍増、政権をとることもあると思いますよ」と自信ありげだった。
さあて、この安倍1強態勢下では改憲でも何でも罷り通ってしまうのではないかと思わされていたけれども、その圧迫感が突如とし消えて、何でもありの政局展開が始まろうとしている。
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『高野孟のTHE JOURNAL』(2017年7月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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