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日本国民に知らされない「四期連続マイナス&ゼロ成長」の真実=内閣官房参与 藤井聡

日本国民は過剰に楽観的なマスコミ報道に騙されている

例えば最近では、次のような報道がありました。

GDP 景気、依然綱渡り…年2.2%増 – 毎日新聞 2016年11月14日付

一見、景気は厳しい状況――ということを伝えてはいますが、この記事には今の日本経済の「惨さ」が全く報告されていないのが実態です。筆者が把握しているデータに基づけば、現実は「綱渡り」どころか「綱から滑り落ちた非常事態」にあるのが、日本経済の実情です。つまり、(意図的か無意図的かはさておき)、国民はこうした過剰に楽観的なマスコミ報道に「騙され」ており、それゆえに不満が蓄積していない――と考えられるわけです。

ついてはこの記事を一例として、いかに国民が「騙されているのか」について、簡単に解説したいと思います。

(1)デフレ下では実質成長率には要注意

記事では「2.2%」成長と書かれていますが、これはあくまでも、物価の低迷を考慮した「実質」の成長率。実際、「名目」成長率は「0.8%」に過ぎません。なぜ、名目の方が1.4%も低いのかと言えば、物価が低下しているから、です。

つまり、実際のGDPは0.8%しか伸びていないが、物価が低下しているから、結果として、「見かけ上の実質成長率」は2.2%となっている、という次第。つまり、2.2%という数字は、物価低迷によって「盛られた」数字です。デフレの時代には、実質成長率だけで軽々に判断してはいけないのです。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163/__icsFiles/afieldfile/2016/11/11/nritu-mk1631.csv

(2)今期の成長の最大の功労者は「輸入減少」

次に、下記報道では「輸出が伸びた」と指摘、その上で「プラス成長を支えた輸出も、スマートフォンの新製品発売など一時的な増加に支えられた面が強い」と書いていますが、これは明確な間違いです。下記データを見ると、輸出は1.8%も「減って」います
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163/__icsFiles/afieldfile/2016/11/11/nritu-mk1631.csv

ではこの記者は何を書き間違えたのかといえば、彼が報告しているのは「純輸出」です。「純輸出」とは、輸出から輸入を引いた数値。これを見れば確かに、7.4%(=9.2-1.8)「増えて」います。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163/__icsFiles/afieldfile/2016/11/11/kiyo-mk1631.csv

……ということは、輸入が減っており、かつ、その減り方が輸出の減り方よりも大きかったから、相対的に純輸出が増えたということが今回生じていた現象です。

実際、輸入は9.2%も減っています。この輸入の減少が、今期のGDP成長を「支えた」という次第。しかも、上記「寄与率」を見れば、この「輸入減」が、最大の寄与率となっています。つまり、今回の「成長」は、結局は「輸入が減った」ことによって得られたにすぎないのです。

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