レア・アースの獲得に赤信号が点った米国
米国も、もちろん、DARPA(国防高等研究計画局)が宇宙兵器の開発を急いでいます。しかし、この分野でロシアと中国に大きく水をあけられてしまったことは否定しようのない事実です。
その理由は、米国が幅広い分野で、コモディティー(原油・ガスなどのエネルギー、金・銀・プラチナなどの貴金属、小麦・大豆・とうもろこしなどの穀物の総称)の逼迫(品不足)に直面しているからです。
一方で、中国の兵器開発を牽制するかのような厳しい中国への批判を行い、一方で、米国の経済成長と軍事増強の二つを同時に達成しようというトランプの計画は、経済成長だけを求める新自由主義の投資家の熱狂を冷やすこととなり、トランプ政権の船出は、かなり厳しい障害に直面しそうです。
米国は重要なコモディティーのうちの50%以上を輸入しています。中でも、電気自動車から軍事技術までの広い範囲で必要不可欠なレア・アース(希土類元素)は中国に依存しています。
ペンタゴンは、10年以上の間、レア・アースの供給網への不自由なアクセスを改善しようと何ら手を打ってきませんでした。
しかし、2016年、米・連邦監査局は、レア・アースに関する広範な報告書の中で次のように警告しています。
「ペンタゴンは、重要なレア・アースを構成することについてまだ同意しない」。
中国のレア・アースに頼っている産業界は米国だけでなく日本も同じです。その中国が、レア・アースを外交カードに使うために、さらに戦略性を強化しようと、2020年に向けて生産量を制限する方針を発表しました。
米国にとって、それは安全保障を直撃するほとのインパクトになるのです。
米国は、完全に中国が輸出しなくなった場合に備えて、レア・アースを採掘し複雑なサプライチェーンを管理するエンジニアを、一刻も早く養成しなければならないのです。
しかし、米国のたった一つの大学でさえも、レア・アースについての本科を設置していないのです。人材の育成には、大分時間がかかります。