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安倍首相「アベノミクスは7合目」もう後戻りできぬ頂上からの景色とは?=東条雅彦

本当に着目すべきは「資金の流れ」

毎年、変化する政府の新政策が注目されがちですが、本当に着目すべきは「資金の流れ」です。

経済の主体は家計、企業、政府の3者です。日銀が四半期毎に公表している資金循環統計では、会計、企業、政府の3者と金融機関(中央銀行も含む)のバランスシートがどのように変化しているかがわかるようになっています。

異次元緩和が始まる前の2012年12月末時点では、次のようになっていました。

<2012年12月末 資金循環統計>

出典:日本銀行

出典:日本銀行

一見、ごちゃごちゃしていて、とても見にくい図になっていますが、本質的には以下の4点を表しています。

  1. 誰かの資産は誰かの負債である
  2. 図の真ん中の金融機関はその資産と負債を仲介している存在である
  3. 家計、企業(民間非金融法人)、一般政府の経済の3主体と、それを仲介している金融機関の資産と負債の状況を表している
  4. 日本の対外債権は海外部門の負債(資金調達)であり、日本の対外債務は海外部門の資産となる

バランスシートの右側の負債は資金調達方法を示し、左側の資産は持ち物リストを表しています。

私達(家計)が銀行に100万円の現金を預けると、銀行の負債欄(資金調達)に「預金」、私達の資産欄(持ち物リスト)に「現金・預金」と記録します。銀行から見ると私達の現金は負債であり、預金者は債権者なのです。

171008tojomasahiko_t1

反対に銀行から住宅ローンで3000万円を借りた場合、私達の負債欄に「借入」(借金)、銀行の資産欄に「貸出」(債権)と記録します。

171008tojomasahiko_t2

このような個別の資金の流れを合計して、経済全体の資金の流れを示したのが、上記の資金循環統計となります。

資金循環統計を簡略化する

資金循環統計を簡略化すると、次のようになります。

<簡略版の資金循環統計>

171008tojomasahiko_4

金融機関は仲介しているだけで、誰かの資産は誰かの負債となっています。そのため、資産総額と負債総額は常にバランスしています。

一部の過激なリフレ派エコノミストの中にはドサクサに紛れて、このことを拡大解釈して、「政府は無限に借金を増やしても破綻しない」「中央銀行は無限に日本円を発行しても破綻しない」と主張する人もいますが、それは明確な間違いです。

家計、企業、政府、金融機関のいずれのプレイヤーも資金繰りがうまく行かなければ、破綻しますし、中央銀行が通貨を大量に発行し続けると、海外に資産が逃げていき、自国の通貨安を引き起こします(フリーランチは存在しません)。

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