政府財政を支援したアベノミクス
日銀が2017年9月20日に公表した「2017年6月末の資金循環統計」は、次の通りです。
<2017年6月末 資金循環統計>
2012年12月末時点と比べて、大きく変化しているのは、中央銀行(日銀)の資産と負債です。
<日銀 2012年12月末 → 2017年6月末>
中央銀行は唯一、通貨「円」を発行できるため、負債の部の「日銀預け金」が急増しています(91兆円 → 363兆円)。
この発行した通貨「円」は「証券」に振り替えられています。資産の部の「証券」の大半は国債で、一部は日経平均連動型ETFとなっています。日銀は大量に日本円を発行して、政府の国債(年間80兆円程度)と日経平均連動型ETF(年間6兆円)を購入しました(124兆円 → 463兆円)。
政府の負債は毎年35~40兆円前後のペースで積み上がっていっています。
<一般政府 2012年12月末 → 2017年6月末>
1,272兆円 – 1,112兆円 = 160兆円
160兆円 ÷ 4.5年 = 約35.5兆円
毎年増加する政府の負債を主に買い支えているのが日銀です。日銀以外の金融機関には、政府の国債を買い支える余力が残っていません。預金取扱機関、保険・年金基金、その他の金融機関の資産の部を合計すると、次のように変化しています。
<2012年12月末 金融機関の資産(単位:兆円)>
↓ アベノミクス開始から4年半後 ↓
<2017年6月末 金融機関の資産(単位:兆円)>
日銀以外の金融機関の資産は、2,141兆円(2012年12月末)から2,105兆円(2017年6月末)になりました。4年半が経過して、資産が36兆円減少しています。
リフレ理論が正しければ、民間金融機関の資産が増加する流れになっていたはずですが、理論通りの現象は生じませんでした。
今後、日本では人口減少が続き、かつてリフレ派が熱弁していたディマンド・プル・インフレも生じないことから、金融機関の資産が増えていく望みはかなり小さいという情勢です。このことは、長期的に日銀が政府の国債を買い支えていくこと(=半永久緩和)を暗に示しています。
アベノミクスを実行して生じた資金循環の結果は、次の通りです。
- 日銀の異次元緩和(国債大量買い)により、民間金融機関の保有する国債が日銀に集まった
- 民間金融機関の総資産は減っており(2,141兆円⇒2,105兆円)、リフレ政策は失敗だった!
⇒ 日銀の国債保有率が4割に到達した。
⇒ 民間金融機関に政府の財政を支援する余力は残っていない。
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